2020 Fiscal Year Research-status Report
身体と「モノ」から見たドイツ語圏芸術人形劇の総合的研究
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20K00148
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 庸子 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (00273201)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | テシュナー / ドイツ / ウィーン / モダニズム / 人形劇 / 仮面 / 身体 / 舞踊 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ドイツ語圏モダニズムの芸術人形劇をめぐる言説や舞台実践が、ドイツ語圏モダニズムのなかでどのような意義を持ち、また当時の身体観の変化や「人間」と「モノ」をめぐる関係の変容どのような関連を持っていたのかを明らかにしようとする試みである。初年度である2020年度には、コロナ禍のため、予定していた国内・海外での調査はすべて断念した。また、物流が滞り、海外の資料館の対応も遅れ気味であったため、新たに収集した資料による研究成果を加味しつつ、収集済みの資料の読解に重点を置いた研究に切り替えた。 その結果、現代日本ではほとんど知られていない重要な人形遣いリヒャルト・テシュナーを例として、モダニズムの芸術人形劇の具体的様相を分析することにした。テシュナー関係の資料に加え、芸術人形劇のハンドブックが新たに出版されるなど、テシュナーの言説と舞台実践を分析する基盤が整って来ているからである。その成果を、日本独文学会の秋季研究発表会における「ドイツ語圏モダニズムの人形劇―リヒャルト・テシュナーを例として」として発表したが、これは日本における最初の本格的なテシュナー紹介である。本発表では、テシュナーの人形劇観と共に、ウィーン・モダニズムの美術や文学、(仮面)舞踊との接点を示した。また身体と「モノ」との関係という視点を得たことで、すでに進めていたドイツ表現舞踊における仮面舞踊に関する研究においても、ジャポニスムにおける能面の伝播など、仮面という「モノ」への着目が重要であることを示唆することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度には、コロナ禍による入国制限や資料館の閉館、出張の自粛等のため、予定していた国内・海外での調査はすべて断念した。また、物流が滞り、海外の文献資料の収集にも遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍によって予定変更が生じたため、2021年度は、初年度に予定していた研究を中心とし、部分的に21年度に予定していた研究を行う予定である。 ①引き続き身体と「モノ」から見た芸術人形劇についての理論的な文献の読解を行う。 ②ドイツ語圏の芸術人形劇に関する文献資料の収集を行う。人形劇論などの文字資料のみならず、写真や映像、スケッチ等の視覚資料の収集に努める。 ③入国制限が解かれて安全が確保され、海外調査が可能な状況であれば、すでに調査の了解が得られているドイツ、オーストリアの博物館で資料調査を行う。海外調査が危険な状況であれば、来年度に調査を延期し、オンラインによる限定的な調査についても検討する。また、現在閉鎖されている資料館が開館され、出張に危険が伴わないならば、国内でも調査を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、国内・国外での調査を断念せざるを得ず、文献の収集も滞った。今年度は、海外の人形劇関係の資料の収集に積極的に取り組む。また海外調査が可能な状況になれば、すでに調査の了解が得られている博物館で資料調査を行う。また現時点で閉鎖されている国内の資料館が開館され、出張に危険が伴わないならば、予定していた調査を行う。
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