2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K00149
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡本 淳子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (40635132)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スペイン演劇 / 劇作家 / 検閲 / スペイン内戦 / 独裁制 / 言論統制 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究は、コロナ禍によるオンライン授業導入による混乱と激務により、計画どおりに進めることは非常に困難であった。とりわけ感染が日本以上に急速に拡大したスペインに住む作家たちに、たとえ書面であってもインタビューを申し込むことは憚られ、その実現は不可能であった。 そのような状況下での研究成果の一つに、ライラ・リポイ(Laila Ripoll)の戯曲『行方不明の子供たち』の翻訳がある。フランコの独裁政権下、内戦時に共和派であった両親が投獄されたり、銃殺されたりして孤児となった子供たち、あるいは共和派の親を持つがゆえに再教育のために誘拐された子供たちをテーマにした作品である。本作は本研究「21世紀のスペイン演劇が向き合う負の遺産」にとって最重要の作品であり、全訳をしたことにより、作品分析の準備が整ったと言える。また、本作は『21世紀のスペイン演劇2』に収録され、出版される予定である。 もう一つの研究成果は、学術論文「フランコ独裁政権下の言論統制―1938年の出版法発布から1950年代までを中心に―」の発表である。本論文は、フランコ時代の検閲を演劇上演のみならず新聞などの出版物にも範囲を広げて考察したものであり、スペインにおける当時の検閲の実態の全体像をより明らかにするものである。本論文では、第二次世界大戦前後、とりわけ連合国軍最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)占領下の日本の検閲についても紹介し、その比較によってフランコ体制下の検閲についての考えを深めることを可能にしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍によるオンライン授業導入による混乱と激務により、計画どおりに進めることは非常に困難であった。また、スペイン出張が不可能であったため、劇作家に会って話を聞くことができなかった。実際に会って話をしなくても、オンラインあるいはメール等でインタビューすることは通常であれば可能であろうが、感染が日本以上に急速に拡大したスペインに住む作家たちに、いかなる形式であれインタビューを申し込むことは憚られ、実現することは難しかった。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは独裁制の時代に検閲を経験した作家ヘスス・カンポス(Jesus Campos, 1938-)とフェルミン・カバル(Fermin Cabal, 1948-)の作品に対する検閲報告書を分析することから始める。 次に、独裁制から民主化への移行期に執筆を始めたパロマ・ペドレロ(Paloma Pedrero)の作品のうち、内戦や独裁制を扱った作品を分析する。 その後は、内戦あるいは独裁制終焉以後に生まれた劇作家たち、ホセ・ラモン・フェルナンデズ(Jose Ramon Fernandez)、ライラ・リポイ(Laila Ripoll)、アルフレド・サンソル(Alfredo Sanzol)、フアン・カルロス・ルビオ(Juan Carlos Rubio)が内戦や独裁制を扱った作品を分析する。 コロナ禍がある程度落ち着いたら、上記劇作家にインタビューをする。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍のため国内および海外への出張がすべて中止となったことが理由である。2021年度の後半には少なくとも国内の出張が可能になることを願っている。
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Research Products
(1 results)