2021 Fiscal Year Research-status Report
中世の修道院における歌唱習慣―ソルミゼーション・シラブルにおける新たな側面―
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20K00158
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Research Institution | Musashino Academia Musicae |
Principal Investigator |
隈 晴代 (宮崎晴代) 武蔵野音楽大学, 音楽学部, 講師 (10622061)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ソルミゼーション / イントナツィオ定型 / ノエアネ / ノエアギス / アウレリアヌス・レオメンシス / ムジカ・エンキリアディス / スコリカ・エンキリアディス / フクバルド |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題研究は、ソルミゼーション・シラブルの中でも、従来の「ド、レ、ミ…」というシラブルではなく、「トリ、プロ、デ…」というシラブルの用法に着目し、このシラブルがどのような意味を持っているのか、またどのような用法で用いられ、どのような経緯で伝承されていったのかを明らかにすることを目的としている。 2021年度はその中でも、「トリ、プロ、デ…」シラブルが、ギリシア語の旋法名である「トリトゥス、プロトゥス、デウテルス……」からきているという説に着目し、グイド・ダレッツォの理論書以前の理論書、特に9世紀の代表的な理論書であるアウレリアヌス・レオメンシスの『音楽論』、作者不詳の『ムジカ・エンキリアディス』および『スコリカ・エンキリアディス』そしてフクバルドの『音楽論』におけるシラブルの用法を精査した。その結果から、これらすべての理論書においてギリシア語の序数詞が旋法の種類を示す名前として使用されていることが確認でき、さらに旋法特定のために、ビザンツ聖歌由来のギリシア語によるシラブル「ノエアネ」や「ノエアギス」が使用されていること、それが次第にソルミゼーション理論へと変容し、ソルミゼーション・シラブルとして用いられていることが明らかとなった。これはイントナツィオ定型からソルミゼーション理論への転換点を意味しており、非常に重要な発見であった。この内容は、11月13日に信州大学で行われた日本音楽学会第72回全国大会で口頭発表し、武蔵野音楽大学研究紀要にも寄稿した。全国大会では、対面で実施されたため、自分の発表に関して国内の研究者たちと意見交換を行うことができ、有意義であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナの感染拡大に伴い、ヨーロッパでの写本調査が来年度に先送りになったため、その部分の研究が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、tri pro シラブルの使用を示している理論書の日本語訳をまとめ、用法毎の分類を進めていく。現在までの進捗状況から、写本調査の部分が遅れているため、夏休みか年末には調査に行きたいと考えている。
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Causes of Carryover |
海外への写本調査がコロナ禍により未実施になり、調査旅費が未使用になったため。
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