2022 Fiscal Year Research-status Report
中世の修道院における歌唱習慣―ソルミゼーション・シラブルにおける新たな側面―
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20K00158
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Research Institution | Musashino Academia Musicae |
Principal Investigator |
隈 晴代 (宮崎晴代) 武蔵野音楽大学, 音楽学部, 講師 (10622061)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ソルミゼーション / イントナツィオ定型 / ノエアネ / ノエアギス / アウレリアヌス・レオメンシス / レギノ・デ・プリュム / スコリカ・エンキリアディス |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、2021年度に続いて、本研究のテーマであるソルミゼーション・シラブルのうち、ビザンツ聖歌由来のシラブル「ノエアネnoeane・ノエアギスnoeagis」に注目し、これらがどのような経緯をたどって、西洋世界のグレゴリオ聖歌に取り入れられたのかという部分を研究した。具体的には、2021年度には考察できなかった理論書3点を考察し、ほぼすべての当該時代の理論書を網羅することができた。その結果として、9世紀の間に書かれた音楽理論書では、例外なくこのシラブルについて触れているが、その中でこの「ノエアネ」シラブルの用法が、2つの潮流に分かれることが明らかとなった。一つはビザンツ聖歌の伝統からグレゴリオ聖歌の伝統に変容させられていった流れ、もう一つはビザンツ聖歌の伝統を受け継いでいる流れである。前者は一つのフレーズ全体に対して当てられていた「ノエアネ」という言葉を、1音1シラブルという方法に変化させたこと、またその過程で、特定のシラブルに半音を当てるという、ソルミゼーション唱法の原点である「半音の認識」へとつながっていた。この研究成果は、2022年12月9日~11日に、イタリアのブレシアで行われた国際学会、Early Music Pedagogy Then and Nowにおいて口頭発表した。また本学会では、同じ研究領域の研究者たちと活発な意見交換を行い、さらに新しい知見を得ることができた。 またこのイタリア行きでは、ミラノのアンブロジオ図書館を訪問し、写本を直接調査することができた。その結果、デジタル画像ではわからなかった紙そのものへの細工を発見することができた。まだその意味は不明であるものの、大きな成果として位置づけることができる。 2023年度はこの成果を基に、最終的なまとめに入りたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナの感染拡大が終息しなかったため、海外への渡航が遅れており、12月の調査で明らかになったことの裏付け調査と、もう1か所の写本調査が終わっていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として、これまでに実施した写本調査のまとめを行い、理論書の訳出と合わせて論文の形で発表したい。
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Causes of Carryover |
海外渡航を次年度に回したため、写本調査費用が繰り越された。
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Remarks |
2022年7月29日招待講演:『ソルミゼーションの歴史』(「仙台バッハゼミナール」主催の特別講演)
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