2022 Fiscal Year Research-status Report
伝統技術の言語化による継承可能性―ベトナム中部地域のゴング製作・調律の事例から
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20K00162
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柳沢 英輔 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特任助教 (00637134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 直樹 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 特任教授 (90136010)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 伝統技術 / 言語化 / ベトナム / ゴング / 調律 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度はベトナム中部高原でフィールドワークを行い、国家が認定する優秀芸術家であるジャライ族の著名なゴング調律師からゴングセットの調律方法について教授してもらい、そのプロセスを映像と音声で記録した。現在、研究代表者が参与観察により得た知識と記録した映像・音声を、研究分担者の櫻井氏と協力して分析することで、ゴング調律の理論と方法を明らかにしようとしている段階である。特にゴング調律師がどのような基準でゴングの音の良し悪しを判断しているか、どのような工程で調律を進めているかを経験的に理解することができたことは、ゴング調律技術の言語化を行う上で大きな進展と言える。
また民族音楽学者のヴィンチェンツォ・デッラ・ラッタ氏と共同制作したジャライ族の墓放棄祭に関する映像作品を撮影から10年後に被写体となったジャライの人々と視聴し、彼らと意見を交換することで、映像メディアが現地の伝統継承に活用しうることを確認することができた。またハノイ在住の映像作家で中部高原の伝統文化を主題にした作品でも知られるグエン・チン・チー氏と映像メディアを活用した文化の記録と表象、公開の方法について意見を交換した。
今後、ベトナムのゴング調律技術を事例に、映像・音響メディアを活用した伝統技術の言語化とその継承可能性について論文にまとめるとともに、国内外の学会等で研究成果を報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度はベトナムでフィールドワークを実施し、ゴング調律技術の言語化については大きな進展を得たため、これまでの遅れをある程度取り戻すことができたが、まだ当初の予定からは進捗がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、言語化したゴング調律の方法に基づき、ゴング調律師の協力の下、現地でゴング調律のワークショップを実施し、言語化した方法の評価と修正を行うことで、伝統技術の言語化による継承の可能性について検証する予定である。また板金によるゴング製作を行う工房についての情報を得たため、今年度中にゴング製作についても調査を行うつもりである。
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Causes of Carryover |
令和4年度はベトナムでのフィールドワークを行うことができたが、研究目的を達成するためには来年度も引き続き現地でデータを収集する必要があるため。令和5年度はゴング調律のワークショップの実施、板金によるゴング製作について調査を行う予定である。
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