2020 Fiscal Year Research-status Report
新たな視点による東日本の中世近世地方仏に関する研究
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20K00165
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
須藤 弘敏 弘前大学, 人文社会科学部, 客員研究員 (70124592)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢島 新 跡見学園女子大学, 文学部, 教授 (00565921)
近藤 暁子 山梨県立博物館, 山梨県立博物館, 学芸員 (80574152)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地方仏 / 津軽 / 南部 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初予定していた研究分担者、協力者が会同しての協議はコロナ禍のため行い得なかったが、メール上での情報共有と確認を経た後、以下のような調査研究を実施した。 1 個々の研究者がそれぞれの地元や近隣地域において中世及び近世の仏像調査や資料収集を継続的に行い、いくつかの重要な発見があった。具体的な例として、代表者須藤が青森県西目屋村で神将形の武神像二体を調査した。等身大前後のこの二体はかつて菅江真澄が18世紀末に「古像」として記録していたもので、うち一体は少なくとも14世紀以前に当地において制作されたことが間違いない。津軽地域でつくられた中世にさかのぼる彫刻はまれであり、その独特の彫刻表現も含めて重要な発見となった。 2 代表者須藤と分担者矢島、協力者西川の3名により、青森県南部町斗賀霊験堂伝来の仏像群調査を3回にわたって行い、平安時代から江戸時代におよぶ22体の仏像神像、12面の舞楽面、4点の龍頭を確認し、詳細な記録と撮影を行った。当彫刻群は馬淵川流域における信仰と造像の具体的で豊富な資料であり、すぐれた彫刻でもある。またわれわれの調査成果にもとづき、南部町は文化財の保存公開計画を立てつつあり、地域の文化財政策や社会教育活動に大きく寄与している。 3 同じく須藤、矢島そして協力者塚本により、岩手県奥州市黒石寺の十王像調査を行った。3名のこれまでの研究実績を踏まえ、本像が全国的に見ても高く評価される江戸時代のすぐれた地方仏であることを確認した。 このほか各自が着実に成果をあげつつあり、須藤は青森県及び岩手県で17回の調査を実施し、コロナ禍の状況下では十分な実績をつんだといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来、東日本各地の研究者による合同調査を中心に設定していたが、コロナ禍による移動自粛はその遂行に大きな障害となった。しかし、うち4名の研究者による調査は各回2名ずつだが5回実施でき、各回とも十分な成果をあげ得た。また各々が地元地域での調査を積み重ね、資史料の精査も順調に進行している。 ただ複数研究者による現地調査が青森岩手両県に限定されたため、それら以外の地域所在の仏像神像との対比研究が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は初年度不可能だった3名以上の研究者合同による現地調査を福島や山梨で実施し、あわせて合同の研究会を開き、問題意識の共有と活発な情報交換につとめる。 個々の研究者による各地での仏像調査をさらに積極的に行い、特に中世仏の近世への影響を明らかにする視点で取り組みたい。 2023年を目途に近世地方仏の展覧会開催を構想しており、本研究費の直接的な社会への成果還元として、その実現に向けて鋭意調査や企画につとめたい。
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Causes of Carryover |
本研究は複数の研究者による現地仏像合同調査を中心にしている。しかしコロナ禍のため研究者の移動が著しく制限され、当初想定していた地域、人数、回数の実施が不可能となったため、旅費の残額が多い結果となった。 調査自体は規模を縮小し、対象地域をそれぞれの近県に止めるなどしたが、内容は充実しており大きな成果もあった。それを踏まえて次年度は北東北での調査に多くの研究協力者も招いて行う。また関東地域の移動制限が解除され次第、東北関東の比較現地調査を精力的に実施し、予算の円滑な執行につとめたい。
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