2021 Fiscal Year Research-status Report
新たな視点による東日本の中世近世地方仏に関する研究
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20K00165
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
須藤 弘敏 弘前大学, 人文社会科学部, 客員研究員 (70124592)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢島 新 跡見学園女子大学, 文学部, 教授 (00565921)
近藤 暁子 山梨県立博物館, 山梨県立博物館, 学芸員 (80574152)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 仏像 / 地域 / 北東北 / 民間信仰 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はコロナ禍のため、研究者合同の調査に困難が生じたが、研究者間の情報共有や進捗状況の確認はしっかり行い、各自の研究は着実に進めてきた。代表者須藤による、中世近世の地方仏現地調査は青森、岩手、秋田、宮城の各県で延べ13回行い、所期の計画に近い内容であった。ことに重要な調査は以下の通りである。 1 岩手県一戸町西方寺の毘沙門天像ほか15点(中世末から近世にかけての在地仏師による造像であることを確認し、長い期間にわたって造像が続いていたことも明らかになった。研究協力者佐々木あすかとの合同調査) 2 秋田県大仙市龍像院の十王像ほか17点(菅江真澄が円空作と記録した十王像ほかを詳しく調査し、円空とは異なるがきわめて個性的な彫刻で、制作時期も近世初頭であることを確認) 3 秋田県湯沢市三途川十王堂の十王像ほかの予備調査(分担者矢島の協力により東北地方で最も魅力的な十王像群の確認。同像は23年度に本調査の予定) 4 青森県蓬田村八幡宮のご神体尊像(発見後60年ぶりに本格的な調査を行い、他に類例のない尊像であることを確認) これらの調査記録により、北東北における仏像や神像の制作や受容の実態が具体的に明らかになってきた。比較的近い地域で制作されながら、それぞれ異なる表現の傾向を持つ仏像が岩手、秋田の各地に存在し、いずれも地域の人々によって大切に守られてきたことをあらためて痛感させられた。前年度の調査成果とあわせて「地方仏」の概念や意義をさらに深く認識することがかなった。視野が広がるとともに視線の精度が増し、研究の輪郭がより確かなものになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本各地で、分担者協力者の方々とともに合同の調査を行い、現地で実作品を前にした検討会を重ねることを所期の目標としてきた。しかし、昨年度からのコロナ禍のため、開始以来2年間を通じて、県を越えた移動や対面会が全面的に規制され、合同調査は2名による予備調査ただ1回しか実現できていない。そのため、代表者と分担者が各々の地元周辺での調査を個別に続ける形態をとらざるを得ないままである。研究者自身ではなんとも解決できない社会状況に起因した遅れであることを強調したい。
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Strategy for Future Research Activity |
移動の規制が解けた時点で、鋭意合同調査を企画実現させるとともに、個別の調査研究をさらに深めていく。代表者、分担者、協力者が可能な限り集まっての研究会を開くことも予定している。 また、研究全体としては遅れがあるため2023年度までを見越した中期的な計画としたい。一方で、すでにいくつもの仏像に関する発見や再確認が相次いでいる。この成果を2023年に全国数カ所での展覧会という形で社会に発信することが決定している。また機会があるごとに地域の講演や行政への助言などの形でも情報発信につとめている。
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Causes of Carryover |
県境を越えた移動が規制され続けた結果、予定していた他県への出張調査と会議の大半が実施できなかったため。 次年度はコロナ禍の影響が弱まり移動自粛が緩和されれば、予定していた合同調査を積極的に実施するが、仮に移動困難な状況が続けば、研究期間の1年延長を申請したい。
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