2023 Fiscal Year Annual Research Report
新たな視点による東日本の中世近世地方仏に関する研究
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20K00165
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
須藤 弘敏 弘前大学, 人文社会科学部, 客員研究員 (70124592)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢島 新 跡見学園女子大学, 文学部, 教授 (00565921)
近藤 暁子 山梨県立博物館, 山梨県立博物館, 学芸員 (80574152)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地方仏 / 東北 / 仏像 / 信仰 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度に当たり、これまでの調査研究成果の整理と補完する調査を行った。研究代表者による調査は青森県佐井村の地蔵菩薩像、南部町隅ノ観音堂の菩薩立像群(六観音像の一部)と岩手県一関市千厩地域の聖徳太子像について行った。南部町の菩薩立像群は平安時代末から鎌倉時代にかけて当地域で製作されたものであることを確認し、町文化財指定を受けるに至った。後者は岩手県南地域で展開した聖徳太子信仰を最もよく表す太子彫像多数が同市で展観された機会に詳しく観察記録することを得た。その展開は当該地域において少なくとも近世初期から始まり、多数かつ多様な造形を生み出してきたことを確認した。いずれもこれまではあまり注目されてこなかった仏像だが、北東北における中世から近世にかけての信仰と造形の関わりについて新たな視点と認識を求める契機となった。 また、本年度は研究代表者が監修した「みちのく いとしい仏たち」と題する展覧会が、4月の岩手県盛岡市岩手県立美術館に始まり、京都市龍谷大学龍谷ミュージアム、東京都東京ステーションギャラリーの3箇所で延べ5ヶ月余にわたって開催された。本展は岩手、青森、秋田の3県に残る主に近世の民間仏132体を展示したもので、その企画と規模いずれも画期的であった。その内容は本研究とその前の科研費研究合わせて8年間の研究成果から構成されている。幸いに3会場合わせて8万人を超える来場者を得、研究内容をまとめた展示図録も1万2千冊以上販売された。どちらもこうした無名の仏像群に対して社会の強い共感が得られたことと、日本宗教美術史に新たな視点が確立されたことを意味する。 科研費による学術研究のアウトリーチの一方法として具体的かつ親しみやすい形で社会に共有された事例として特記されよう。
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