2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K00177
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
瀧口 美香 明治大学, 商学部, 専任准教授 (80409490)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | キリスト教図像学 / ビザンティン美術史 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビザンティン帝国の北に広がる諸地域では、後期ビザンティンの聖堂装飾の模倣が多く行われた。そのため、ビザンティン美術の痕跡は、帝国内よりもこうした地域において多く残されている。ただし、それぞれの地域は文化的土壌が大きく異なっていたために、同じビザンティンの図像体系を規範としながらも、さまざまなバリエーションが生じた。 本研究において第一に取り上げたのは、中世セルビア王国のネマニッチ王朝の王たちが建立した聖堂装飾である。その聖堂装飾には、ビザンティン帝国の美術のみならず、西ヨーロッパのロマネスク、あるいはゴシック美術の要素が取り入れられている。したがって、ネマニッチ王朝の聖堂装飾を分析するにあたっては、セルビア王国とビザンティン帝国の交流のみならず、西ヨーロッパとの交流に目を向けることが不可欠である。このことから、十字軍および聖地エルサレムを新たなキーワードとして、両者の交流を探ることが必要であると考え、実地調査に赴いた。 エルサレム旧市街にある大天使ミカエル・ガブリエル修道院は、1312年にセルビアのミルティン王により設立された。 場所はエルサレム旧市街の城壁内で、聖墳墓教会やギリシャ正教会総主教座の近くに位置している。修道院は、ビザンティン帝国の修道院(4世紀建立)の跡地に建設された。セルビア王国のミルティン王は、義父であるビザンツ皇帝アンドロニコス2世パレオロゴスを支援するためにセルビア軍を派遣し、オスマン軍を撃退した。この時の勝利を記念して、ミルティン王は、ここ聖地エルサレムに大天使ミカエル・ガブリエルに献堂する修道院を建設した。エルサレム旧市街の城壁内の史跡を訪問し、同修道院の歴史的・地理的位置付けを確認した。聖地エルサレムにおけるセルビア王の働きを認識することで、セルビア王国内の諸聖堂と聖地巡礼との関連性を探る大きな手掛かりとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルスのため渡航できず、当初予定していた実地調査ができなかった。2023年春にようやく渡航できたものの、これまでの遅れを取り戻すには至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究を推進するに当たって、現地に赴いて聖堂の調査を行うことは不可欠である。今後はロシアとウクライナの戦況を見ながら、可能な範囲で実地調査を継続したい。また、昨年度に引き続き文献資料の整理を行う。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルスのためしばらく渡航できず、当初予定していた実地調査ができなかった。2023年春に渡航したものの、これまでの遅れを取り戻すには至っていない。本研究において実地調査は不可欠であるが、コロナ以降、燃油サーチャージ、現地での宿泊費、車両代などが大幅に値上げさた上に、円安のため、申請時に予想していたよりも実地調査に費用がかかっている。次年度使用額は、実地調査の費用にあてたい。
|
Research Products
(3 results)