2023 Fiscal Year Research-status Report
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20K00177
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
瀧口 美香 明治大学, 商学部, 専任准教授 (80409490)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ビザンティン美術史 / キリスト教図像学 / 聖堂装飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「ビザンティン帝国の北」という大きな枠組みを設定し、具体的には中世セルビア王国の作例を検討してきた。もちろんのことビザンティン帝国の北部は、セルビアのみならず、旧ユーゴスラヴィア連邦から独立した諸国(クロアチア、スロヴェニア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、モンテネグロ、北マケドニア)、さらにはその北の諸地域(ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー)といった大きな広がりを持つ。これらの地域において継承されたビザンティウムの文化的遺産は、伝播の過程において各地方の伝統と接触し、変容を遂げつつ、各地で独自の芸術的景観を形成してきた。 こうしたテーマに関する最新の刊行物としては、M. A. Rossi and A. I. Sullivan, eds., The Routledge Handbook of Byzantine Visual Culture in the Danube Regions, 1300-1600 (New York: Routledge, 2024). を挙げることができる。本書は、これまで部分的あるいは個別的にしか取り上げられることのなかったドナウ川流域に注目し、ドナウ川が文化交流を促す役割を果たしてきた諸地域における、ビザンティンおよびポスト・ビザンティン芸術の伝播と変容をテーマとしている。 令和5年度は、ドナウ河畔に位置するセルビアの首都ベオグラードでの実地調査を行った。さらに、これまで本研究で検討してきたセルビアの作例を、より大きな芸術ネットワークの一部として位置づける必要があると考え、そのための一つの足がかりとして、セルビアに隣接する正教会文化圏であるルーマニア(ブカレスト、ブラショフ、シゲトゥ・マルマツィエイ、スチャヴァ)での調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を推進するに当たって、現地に赴いて聖堂の調査を行うことは不可欠である。しかしながら、2020年以降の新型コロナウィルスの蔓延により、欧州各国が入国制限や渡航に関するさまざまな条件(入国後一定期間の自主隔離など)を設定していたために、実地調査の実現が困難な時期が続いた。2023年春にようやく渡航できたものの、これまでの遅れを取り戻すには至っていない。 またコロナ以降、燃油サーチャージ、現地での宿泊費、車両代などが大幅に値上げさた上に、円安のため、申請時に予想していたよりも実地調査に費用がかかり、研究費の使用を見直す必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、これまでの遅れを取り戻し、研究成果をまとめたい。具体的には、「ビザンティン帝国の北」という大きな枠組みの中に、各地の芸術的景観を位置づけ、ビザンティン美術との比較によって、ローカルな伝統との融合の結果生じた、新しい図像や聖堂装飾プログラムを浮かび上がらせたい。
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Causes of Carryover |
コロナ以降、燃油サーチャージ、現地での宿泊費、車両代などが大幅に値上げさた上に、円安のため、申請時に予想していたよりも実地調査に費用がかかり、予算の執行を計画通りに進めることができなかった。令和5年度は実地調査の遅れを取り戻すべく渡航を優先させたが、次年度は本研究の成果を総括するために予算を使用することを予定している。
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