2021 Fiscal Year Research-status Report
神格の偶像化にみる儒教と仏教の習合―中国の仏像制作黎明期における霊魂観の図像研究
Project/Area Number |
20K00178
|
Research Institution | Joshibi University of Art and Design |
Principal Investigator |
楢山 満照 女子美術大学, 芸術学部, 准教授(移行) (30453997)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 中国 / 初期仏像 / 儒教 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国における仏像制作の黎明に、儒教の霊魂観が具体的にどのように関わっているのか、それを関連作品と文献の双方から明らかにすることを目的とするものである。3年間にわたる研究においては、次の3つの段階を設定した。すなわち、収集済みの作品情報と文献資料の分析、実地調査による新知見の獲得、そしてその公開、この3段階である。 二年目の2021年度は、初年度におこなった作品と文献資料の分析結果をもとに、一篇の論文を発表した。そのなかでは、仏教が伝来した漢代の墓域に着目し、死者が眠るその空間において、儒教の故事説話の登場人物たちがどのような役目と機能を果たしていたのかを論じた。これにより、当時における儒教の霊魂観と祖霊の祀り方を具体的に整理することができ、そこに流入した仏教の霊魂観との影響関係を、より明確に論じることができるようになった。 これまでの二年間は堅実に研究計画を推進することができたものの、新型コロナウイルスの感染拡大をうけ、中国およびアメリカ合衆国の美術館・博物館で作品の実見調査を実施することができなかったのは痛手であった。しかし、最終年度(2022年度)に向け、諸外国の研究者たちと密に連絡を取りあい、新出の作品の情報や画像データを送ってもらえるよう、できる限り研究環境を整えている最中である。可能な限り渡航し、それが無理な場合においても、最新の研究データを逐一把握できるネットワークを築き、国内外のトップジャーナルへ成果論文を投稿できるよう、最終年度は計画的に研究を進めていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で調査対象とする画像石と仏像は、中国、日本およびアメリカの美術館・博物館に分蔵されており、その実見調査は必須である。初年度(2020年度)は収集済みの作品情報と文献資料の分析に重点を置いて計画を立てていたため、新型コロナウイルス感染拡大の影響は、さほど受けることはなかった。しかしながら、二年目(2021年度)は計画していた諸外国での作品の実見調査を実施できなかったため、初年度におこなった基礎研究の成果を論文としてまとめる期間にあてることとなった。最終年度(2022年度も)作品調査の実施の可否は不透明であるものの、渡航ができなかった場合に備えておく必要がある。研究者間のネットワークをより緊密に構築し、所蔵機関より詳細な作品情報を提供していただくことで、当初の研究計画を遂行していきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
応募当初、最終年度(2022年度)の計画では、中国およびアメリカ合衆国の美術館・博物館における作品の実見調査で得られた新知見を国内外のトップジャーナルに論文として発表することを計画していた。しかしながら、2年目(2021年度)に調査を実施できなかったため、今現在、新出あるいは未報告の作品に関する情報の提供を、所蔵機関に依頼している。渡航と調査実施が実現しない場合、最終年度はその情報を精査し、日本の東洋文庫、東京大学東洋文化研究所、早稲田大学中央図書館、京都大学人文科学研究所などで、関連資料の収集と精査を引き続きおこなう。作品の実見調査をもとにしたものとは内容に多少の変更が生じるものの、それにより、最終年度下半期に計画している論文の投稿は可能と考える。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により、初年度(2020年度)に計画していた国内機関での作品調査のみならず、2年目(2021年度)に計画していた中国とアメリカ合衆国での作品調査も実施することができなかった。この旅費だけではなく、資料データ整理用のファイルなどの備品購入費、中国語と英語の校閲にかかる経費が残額として生じた。 最終年度(2022年度)はこの残額も実見調査の経費として請求し、応募当初に計画していた国内外の機関での実見調査を実施したい。渡航が実現しない場合は、諸外国の機関に画像データと作品情報の提供を依頼し、その情報をPC上でデータベース化して整理する。それにより、最終年度(2022年度)の下半期に計画しているトップジャーナルへの成果論文の投稿につながるものと考える。
|
Research Products
(1 results)