2020 Fiscal Year Research-status Report
Research on Colour Printing in the Victorian Era Focusing on George Baxter
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20K00179
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
大森 弦史 東京工芸大学, 芸術学部, 准教授 (20633308)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジョージ・バクスター / ヴィクトリア朝 / イギリス美術 / 色彩版画 / カラー印刷 / 版画史 / 印刷史 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は主として、(1)ジョージ・バクスターのバクステロタイプに関する考察、(2)東京工芸大学所蔵・ヴィクトリア朝色彩版画コレクションのデジタル・データベース作成、の2点に関して研究を進めた。 (1)本テーマは当初の研究計画に含まれていなかったものだが、前年度までの予備研究からバクスターの画業全体を捉える上で重要であることがわかったため、当年度前半に集中して取り組んだ。カラーではなくモノクロームの版画であったバクステロタイプは、黎明期の美術複製写真に対抗する目的で短期間に制作された美術複製版画のことである。バクステロタイプの実物調査と同時代資料の分析をおこない、1850年代前半期における版画から写真への新旧メディアの覇権交替の有り様を詳細に考察した。なおこの交替劇には1851年ロンドン万国博覧会が決定的な契機となっていたため、研究計画の焦点のひとつである同万博に関する一次資料を収集・蓄積できたことは、翌年度以降の研究計画に大いに資するものがあった。また単なる作家研究にとどまらず、イメージ複製術の歴史のなかでバクスター版画を巨視的に捉えることができた点も大きな成果であった。これらの考察は6月に日本写真芸術学会・年次大会において発表され、9月に刊行した共著に論文としてまとめられた。 (2)本データベースの作成は当初の研究計画に沿ったものである。当年度は作品ごとの状態チェックおよび計測、レファレンスデータの収集などを行った。令和3年度末の公開を目指して、今後も継続的に実施していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症流行にともない、令和2年度夏に予定していたイギリス(ロンドン、サセックス州ルイスなど)での調査が実施できなかった。また版画作品を含めた同時代資料の購入に関して英国在住のコレクターと折衝を行ってきたが、ロックダウン等により現地でも資料収集が困難な状況が続いているため、当年度は結果として不調に終わった。 特殊な色彩版画技法であるバクスター法に焦点を当てた本研究は何より、作品の実見に基づく調査を前提としたものであった。またバクスター研究は世界的にも進んでいないため、信頼に足る写真資料・デジタルアーカイブなどがなく、複製を通じた研究にも自ずと限界があった。なかば緊急回避的に取り組んだバクステロタイプの考察とデータベース作成のための既収蔵作品の調査によって一定の成果をあげることはできたものの、研究計画は初年度から大きな躓きを余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は既収集の作品および文献資料を通じた研究を進める。またデータベース作成と令和4年度中に計画している展覧会の準備など、国内で完結可能なテーマを先行して実施する予定である。しかし研究の進展には現地調査が不可欠であるため、渡航に関する今後の情勢を見極めるとともに、研究期間の延長も視野に入れながら計画に見直しを加えていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行にともなう旅費の未使用分、不調に終わった資料購入のための物品費残額が、次年度使用額として繰り越されることになった。
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Research Products
(2 results)