2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on Colour Printing in the Victorian Era Focusing on George Baxter
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20K00179
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
大森 弦史 東京工芸大学, 芸術学部, 准教授 (20633308)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジョージ・バクスター / ヴィクトリア朝 / イギリス美術 / 色彩版画 / カラー印刷 / 版画史 / 印刷史 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画に沿って、2021年度は(1)西洋の色彩版画技法に関する原典調査、(2)ジョージ・バクスター『万国博覧会の至宝』シリーズの考察、(3)東京工芸大学所蔵・ヴィクトリア朝色彩版画コレクションのデジタル・データベース作成、の3点に関して主に研究を進めた。 (1)バクスター法の歴史的位置づけを明らかにするため、西洋色彩版画に関する技法書の網羅的調査を実施し、その成果の一環として色彩版画理論の原点とみなされるル・ブロン『カラリット、あるいは絵画における色彩の調和』(1725頃)の解題付き全文訳をおこなった。また木口木版による多版色彩版画を実践したサヴェージによる『装飾版画の実践的なヒント』(1822)に特に着目し、バクスター法の制作手順を詳細に紹介したシーリー『バクスター版画の制作』(1924-25)と比較をおこなうことでバクスター法の特殊性・独自性を考察した。 (2)1851年ロンドン万博をテーマとした30点余のシリーズ(1853)を東京工芸大学所蔵作品をもとに詳細に調査した。特にその主題選択の戦略についての考察を試み、比較対象となる別作家の版画、写真、雑誌・新聞挿絵等の収集につとめた。ただし文献およびウェブを通じて得られる資料数には限界があったため、継続課題として2022年度以降の現地調査を通じてデータをさらに補っていく必要がある。 (3)昨年度からの継続課題である。100点余のヴィクトリア朝色彩版画を新規コレクションとして加えることができ、作品ごとの状態チェックおよび計測、レファレンスデータの収集等を実施した。しかし写真撮影およびデータベース構築まで至らなかったため、2022年度末の公開を目標に継続的に実施していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症流行に伴う渡航規制のため、昨年度にひきつづいてイギリス各地の美術館・図書館などでの現地調査を全く実施できなかったことが痛恨であった。イギリス在住のコレクターを通じた作品新規購入によって幾分か補うことはできたものの、バクスター版画の実見および比較対象となる同時代メディアの広範かつ詳細な調査が叶わなかった状況は、研究遂行上の核を欠いたといわざるを得ない。しかしその一方、技法書の精査を中心とした文献研究では一定の進捗があった。展覧会準備はコロナ禍の影響もあって出遅れを余儀なくされている。現在は学内施設を用いた開催とともに、外部美術館との共同による展覧会の実施可能性を模索しているところである。データベース公開については技術的障壁によって停滞し、今年度末公開の予定を達成できなかった。現在、外部委託も選択肢にいれながら業者・予算・要件設定等を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年3月にイギリスへの渡航制限が全面解除されたため現地調査の見込みがたった。入念な事前準備のもと今年度後半までには実現したい。ただし個別の美術館・図書館等で入館制限が継続しているところもあり複数回の渡航が必要と思われる。国内のみで完結可能な計画(文献調査、展覧会準備、データベース作成)を継続的に推進していくとともに、研究期間延長を前提として今後の研究計画を組み直していく予定である。
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Causes of Carryover |
2年分の旅費未使用分および資料購入用の物品費残額等が、次年度使用額として繰り越された。
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Research Products
(1 results)