2020 Fiscal Year Research-status Report
Re-examination of the wall paintings from the site of Fayaztepa, southern Uzbekistan
Project/Area Number |
20K00185
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
影山 悦子 名古屋大学, 人文学研究科, 特任准教授 (20453144)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中央アジア / クシャーン朝 / バクトリア / 仏教美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はウズベキスタン南部のファヤズテパ仏教遺跡から出土した壁画を研究対象とし、その制作年代および歴史的背景を明らかにすることを目的とする。 前年度までに保存修復を完了した同遺跡の壁画断片(女性頭部、半裸の少年、仏塔、男性供養者群)を広く公表するために、ウズベキスタン科学アカデミー国立考古学センターの保存修復専門家とイスタンブール大学の研究者とともに、報告書を作成し、2021年2月に刊行した。筆者は、同遺跡と出土壁画に関する先行研究をまとめ、新たに修復を行った壁画の概要とそこから得られた新知見について報告した。他に壁画の保存修復、壁画片の自然科学的調査、壁画に表された仏塔についての研究報告を含む。 また、2021年3月には、ウズベキスタン科学アカデミー国立考古学センターと共同で、国際ワークショップ「考古遺物から見た仏教文化の伝播と交流:古代日本と中央アジア」をオンラインで開催した。筆者は、新たに修復されたファヤズテパ壁画の図像を、インドのバールフトの浮彫、ガンダーラの石彫、中央アジアの他の遺跡の壁画と比較し、クシャーン朝期の仏教美術の伝播、さらにエフタル期まで継承された可能性について報告した。 一年を通して行った研究活動として、ファヤズテパ遺跡の北西1キロメートルに位置するカラテパ遺跡で出土した仏教壁画に関する報告書、研究論文を収集した。また、国内外で行われた研究会(一部オンライン)に参加し、クシャーン朝およびポスト・クシャーン朝期の中央アジアの美術史、考古学、文献学に関する最新の研究成果を把握するように努めた。 今年度はウズベキスタンに出張し、国立考古学センターにおいて、ファヤズテパ遺跡出土壁画の調査、記録を行う予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、実施することができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ウズベキスタンに出張し、ファヤズテパ遺跡出土壁画調査、記録を行う計画を立てていたが、新型コロナウイルス感染症により、実施することができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、ウズベキスタンとロシアに出張し、ファヤズテパ遺跡出土壁画および関連する壁画の実物調査を行う予定である。しかし海外渡航が制限される状況が続くようであれば、2022年度に延期する。 ファヤズテパ遺跡出土壁画と中央アジアの他の遺跡から出土した壁画の比較検討を行う。背景の下の部分、おおよそ人物の膝より下の部分を黒色で塗り、小さな白い花を散らす表現が、ファヤズテパ遺跡の壁画に見られるが、筆者はそれがクシャーン朝期に成立した「地面」を表す方法であり、エフタル期まで中央アジアにおいて広く使用されたという見通しを持っている。バクトリアとソグド以外の地域、とくにバーミヤンやクチャにおいても、このような表現方法が行われたかどうか、また地域により受容の期間、程度に違いがあるかなど、より詳細な検証を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により、やむを得ず、予定していたウズベキスタン出張を延期したため、次年度使用額が発生した。次年度の出張期間を延長して使用する計画である。
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Research Products
(8 results)