2022 Fiscal Year Research-status Report
Christian Missions and Martyrdom in the Era of the Mongol Empire: An Art Historical Approach
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20K00186
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
谷古宇 尚 北海道大学, 文学研究院, 教授 (60322872)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フランシスコ会 / 殉教 / パリ外国宣教会 / 再布教 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、13~14世紀のローマ教会、とくにフランシスコ会による「宣教」がテーマである。そのため特に13世紀から19世紀にかけての宣教地を実際に訪れて調査することを主に計画していた。具体的には中国福建省・泉州、アゾフ海に面したタナイス、インドのタナ(現ムンバイ)、チャガタイ・ハン国の中心都市だったアルマリクのあった地域、ジョージア、アルメニア、メキシコ・ポポカテペトル山腹、ペルーのクスコなどであるが、コロナの影響とウクライナ情勢により、当該年度は現地調査が困難であった。 年度の後半にようやく状況が正常化しつつあるイタリアで、とくにこれまで画像資料の不足していたヴェローナのフランシスコ会聖堂で写真撮影を行い、フィレンツェの美術史研究所で文献の調査をすることができた。また中国や中央アジアに滞在する計画を立てることができないため、シンガポールのナショナル・ギャラリーやアジア文明博物館でカトリック宣教についての調査を行った。時代的には近代にやや比重を移しつつあるが、次年度のアルメニアでの調査を視野に入れて、13~14世紀のイタリアとアルメニアの美術との関係について、文献調査を行っている。 これまで国外出張を延期してきたため、当初予定した調査を研究期間内に終えることは難しくなっている。そのため渡航が可能になった後も、調査対象を部分的に遠隔地から日本に近い韓国やベトナムへと変更し、本研究のテーマの一つである大航海時代から近代にいたる時代の宣教地の美術作例について、18世紀後半から19世紀にかけての「再宣教」の文脈の中で「殉教」の図像を取り上げる方向で研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナとウクライナ情勢のため、延期している国外(ジョージア、アルメニア、インド、ペルー)での調査を行うことができず、研究計画の主要部分が実施されていない。そのため、調査報告などの成果をまったく発表できていない。オンラインで利用できるデータベースや文献を利用した作業がほとんどとなっているが、資料調査が難しい状況にある。研究期間の残りが少なくなってきているので、調査する地域の重点を韓国やベトナムなど、日本に近い国々の比較的新しい時代の事例に変更する予定であるが、これまでそれらの地域に関しては準備を進めてこなかったため遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
18世紀末から19世紀半ばにかけてのパリ外国宣教会の韓国やベトナムにおける活動を本研究のもう一本の柱とするため、これらの国々での殉教についての図像調査を、現地やパリ外国宣教会の本部などで調査する比重を高める。 その一方で、13~14世紀のアルメニアの美術や、同時代のイタリア美術との関係については成果が期待できるため、アルメニアとイタリアでの調査を重点的に行う。 国外での調査がこれまで未実施だったため、経費が繰り越されてきている。研究期間内に予定した調査の実施が難しいと考えられるため、補助事業期間延長を想定している。
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Causes of Carryover |
コロナの影響により予定していた国外の調査地をこれまですでに訪れていたイタリアやシンガポールに変更したため、資料収集の経費が想定を下回った。またアルメニアなど、本研究の中心となる調査地で作品調査ができなかったため、成果発表のための謝金を利用しなかった。国内外の出入りが容易になり次第、国外での調査を順次開始することにより当該助成金を使用する。
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