2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K00190
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
後小路 雅弘 九州大学, 人文科学研究院, 特任研究員 (50359931)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 東南アジア / 近代美術 / ナショナル・アイデンティティ / ナショナリズム / モダニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目となる本年度は、新型コロナ感染症の流行が続き、国外調査が実施できず、国内調査にも一定の制約があった。そこで、基本的な文献を収集したほか、過去に収集してきた関連資料の整理を行った。作品の実見調査としては、国外調査はできなかったが、国内でも山口情報芸術センターでの「ヴォイス・オブ・ヴォイド 虚無の声」展、豊田市美術館での「百鬼夜行」展と、二つの大規模なホー・ツーニェンの個展が開催され、いま東南アジアにおいて本研究テーマについて考察するうえでもっとも重要な作家について実見調査する機会を得た。 また、研究会「美術のナショナリズム/ナショナル・アイデンティティ」を開催しモデレーターを務め、基調報告として「アジア美術のナショナリズム─《想像の共同体》再読」を発表したほかインドネシアと日本の近代美術の若手研究者2名を招き、さらにコロキウム「ASIA 1930s ─ ネーション/美術/モダン」を開催してモデレーターを務め、基調報告「1930年代東南アジアの美術と『国民/国語/国土』の誕生」を行ったほか、ベトナムと日本近代工芸の代表的研究者2名を招いた。二つの研究会で、4名の研究者のそれぞれの研究から事例報告を受け、それに基づく議論を行った。またその報告書を編集中であるが、来年度の研究会と併せて発行する。 予定した海外調査は実施できなかったが、東京芸術大学主催のクロストークシンポジウム「“クリエイティブ・アジア”の新しいプラットフォームに向けて」のパネリストに招かれ、また国際交流基金の「アジアセンター クロストーク」のモデレーターに招かれ、いずれもオンラインで配信されるなど、コロナ禍の時代における状況の中で、新しい形での研究成果の発表の機会が得られたことは、ひとつの可能性を感じさせるものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度から引き続き、新型コロナウィルス感染症の流行によって、東南アジアへの渡航ができず、国内での調査も困難な状況にあった。収束後に内外の調査を実施しようと考えたため、代替的な調査研究への取り組みが遅れた。ただ、オンラインを併用した研究会を主宰し、またオンラインでの研究会に招かれて、新たな研究の機会を得た面もあった。昨年度同様、コロナ禍の功罪両方の面に直面し、本研究は遅れざるを得なかったものの、逆に、その遅れを取り戻す部分もあった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の推進方策は、感染症流行の行方次第の面があるものの、三年目の次年度は、東南アジアの現地調査を実現することができると思われる。それ以外にも、可能な限り日本国内で開催される関連展覧会の機会をとらえて、本テーマの考察を行う。 これまでの研究会の成果をふまえて、内外の研究者による研究会を補足的に開催し、これまでの研究会と併せて報告書を作成する。 アジア近代美術研究会をはじめ、機会をとらえてこれまでの研究成果を発表し、関係者との意見交換を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症が、今年度も収束せず、国外の現地調査が不可能であった。いずれ落ち着いてきたら現地調査を行うつもりで、様子を見ているうちに、国内の調査など代替的な研究に切り替えることが遅れてしまったことが次年度使用が生じた理由である。次年度は、3年目の最終年度になるため、シンガポールを中心に東南アジアの現地調査を精力的に行う予定で準備を進める。現地調査では、可能な限り関連作品の実見調査を行うとともに、現地の研究者との意見交換を行う。また、これまでの研究をふまえ、補完的なシンポジウムを内外の研究者を集めて行うほか、関連の研究者を招いてセミナー形式の研究会を行う。過去2年間の研究会を併せて報告書を作成する。
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