2022 Fiscal Year Research-status Report
『伊勢物語』と皇室文化の研究―近世の絵画と注釈書を中心に―
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20K00192
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
大口 裕子 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 客員研究員 (50803780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 賜鶴子 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 教授 (60180139)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 伊勢物語 / 伊勢物語絵 / 注釈 / 本文 / 源氏物語絵 / 天皇 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者(大口裕子):美術史について、伊勢物語絵の全体的な把握を進めるべく、引き続き『伊勢物語』を主題とする関連作品を、大阪芸術大学教授・河田昌之氏主催の調査にも参加しつつ進めた。その内容は、伊勢物語の主題の多様な展開に目配りしたもので、染織の下絵、かるたなどの工芸品にまで及び、それぞれの用途における表現の特徴などを検討した。同時に、伊勢物語絵や『伊勢物語』を主題とする工芸におけるモチーフについても横断的に考察し、伊勢物語絵との関連の深い源氏物語絵や、他の絵巻などの絵画作品との比較も踏まえて研究した。絵師や工房は伊勢物語絵も源氏物語絵も遺している。そのため、さらに研究テーマの一つである住吉派の手になる源氏物語絵の作品調査も行い、伊勢物語絵との関連について考察した。国文学について、分担者の青木賜鶴子氏が翻刻、解題の執筆を行った北村季吟の『初度本伊勢物語拾穂抄』(大阪大学附属図書館蔵)について、代表者は翻刻の一部を担当していたが、今年度に出版されるにあたり校正を重ねた。他に、歴代天皇の伊勢物語との関わりを確認するとともに、本年は特に、明治天皇と『伊勢物語』を主題とする文化財との関係も検討し、発表した。東国や東北の歌枕の宝庫でもある『伊勢物語』の舞台となった地を行幸した天皇は、明治天皇が初めてであるためである。 ・研究分担者は(青木賜鶴子):上記『初度本伊勢物語拾穂抄』と版本『伊勢物語拾穂抄』(延宝八年刊)の解題と翻刻の校正を行った。また、香雪美術館蔵伝世尊寺行尹・行房筆になる『伊勢物語』の第四十九段の本文と、伊勢物語絵、『源氏物語』総角巻との関わりについての論文を寄稿した。さらに、『大和物語』、『拾遺和歌集』、『源氏物語』の注釈書等の古典文学を大阪との観点から論じた二本の論文が活字化された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
注釈書の翻刻・解釈について、他本との比較等を行いながら進めており、予想以上に時間がかかっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れている注釈書の翻刻と、他の注釈書との比較および解釈について時間をかけることを中心とする。 そして、これまで積み重ねてきた伊勢物語絵との検討ももう一つの柱として推進する。
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Causes of Carryover |
代表者、分担者ともに、海外調査のために新型コロナウィルス流行の継続のためにイギリスでの作品の熟覧調査を取りやめたため積み残されたが、来年度は、調査の機会を伺いたい。
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