2023 Fiscal Year Annual Research Report
『伊勢物語』と皇室文化の研究―近世の絵画と注釈書を中心に―
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20K00192
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
大口 裕子 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 客員研究員 (50803780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 賜鶴子 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 教授 (60180139)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 伊勢物語 / 伊勢物語絵 / 注釈書 / 注釈 / 後水尾天皇 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は本研究の集大成として、積み重ねてきた作品調査、注釈書の検討の上に、伊勢物語絵と注釈書さらには本文との関係を総括した。 本年度はコロナ禍で延期した在外作品の調査のため、大阪芸術大学の河田昌之教授主催のイギリス・アイルランドでの調査に代表者・分担者も同行し、伊勢物語絵、源氏物語絵、歌仙絵などを熟覧した。具体的な伊勢物語絵は、「伊勢物語図会」(大英図書館蔵)、住吉如慶筆「伊勢物語画帖」(大英博物館蔵)、「伊勢物語絵本」(チェスター・ビーティー・ライブラリー蔵)で、既刊本の掲載写真では分かり得ない本紙の裏面や金の使用箇所も確認し、伊勢物語絵の実態の再把握に繋がった。 成果について、代表者は、河田昌之・赤澤真理・大口裕子・伊永陽子編『伊勢物語 造形表現集成』の編者の一人で、論考1件「モチーフからみる伊勢物語絵―その多様な背景―」、コラム1件、作品解説4件(そのうち2件は上述の海外調査で実見)、モチーフ解説41件を担当した。論考では、伊勢物語絵のモチーフを本文にないが描かれるものと本文にあるが描かれないものに大別し、先行研究に私見を交え多様な背景を考察した。特に本文に具体的に述べられないモチーフでは、従来指摘されてきた注釈から絵へという流れとは逆の、絵から注釈へという可能性を指摘した。 分担者は、新しく出現した香雪美術館蔵伝世尊寺行尹・行房筆『伊勢物語』の本文について翻刻、分析し、『源氏物語』本文からの影響と考えられてきた伊勢物語絵第49段は、『伊勢物語』本文をもとに描かれたと考えるべきことを指摘し、本文と絵画の関係の新たな視座を示した。また、昨年度刊行した青木賜鶴子・大口裕子著『伊勢物語古注釈大成 第七巻』の新刊紹介を行い、後水尾天皇へも献上された北村季吟『伊勢物語拾穂抄』の二種の注釈書の特徴を示すとともに、本作で完結した『伊勢物語古注釈大成』シリーズについても述べた。
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