2021 Fiscal Year Research-status Report
The Imagery of sacred hearts in the Netherlands in the 15th century
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20K00199
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
蜷川 順子 関西大学, 東西学術研究所, 客員研究員 (00268468)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 聖心 / 風のイメージ / 空に浮かぶ十字架 / 聖母の聖心 / ハート形 / 見えるものと見えないもの / とりなしの祈り / 七つの悲しみ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の中心課題は、15世紀のフランドル(ベルギー)で制作された「フレマルの画家」またはロヒール・ファン・デル・ウェイデンによる壁画作品《受難の道具をもつ三天使のいる磔刑のキリスト》が、ハート形による聖母の聖心を表わしているのではないかとする仮説である。イエスの聖心は15世紀前半に造形化されたと思われるため、これが証明されれば、ほぼ同時期に聖母の聖心も描かれていたことになる。 2021年度は、13世紀前半に設立され、聖心崇敬の拠点となった、ドイツの旧ザクセン州ヘルフタ女子修道院について、三人の修道女達の活躍で聖心崇敬が育まれた事情を論じ、ヘルフタおよびその周辺で聖心崇敬がルターやクラーナハの活躍した時代まで残存していた可能性を「ヘルフタ女子修道院と聖心崇敬ー聖母の聖心への造形的アプローチへ向けて」『関西大学文學論集』第71巻第1・2合併号、2021年9月、31ー63ページで論じた。 また、2018年に関西大学で開催された第69回美学会全国大会に合わせて開催した国際シンポジウム「ハート形のイメージ世界」のプロシーディングに基づき、編著『ハート形のイメージ世界:見えるものと見えないもの』(晃洋書房、2021年11月20日)をバイリンガルで出版した。ここでは七名の論者によるハート形のイメージ世界に関する論考を扱い、時代や場所を越えたハート形のイメージの広がりについてまとめた。 1505年にペスト撃退祈願の依頼を受けてルーカス・クラーナハが作成した、空中に浮かぶハート形の中の磔刑図木版画は聖母の聖心だと思われる。ここで風にはためくイエスの腰布の源泉はロヒール・ファン・デル・ウェイデンにあることを、国際シンポジウム「風のイメージ世界」(オンライン開催、2022年3月26ー27日)で発表した「ロヒール・ファン・デル・ウェイデンの風の表象」で扱い、本課題研究の対象作品もその系譜に位置づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究が遅れている理由は、コロナ禍のため海外調査ができないことである。オンラインやインターネットで行うことができることは実施しているので、ある程度は進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は海外出張が可能で、海外でもいろいろな機関を訪問することができるため、国際学会に合わせて調査旅行を行う。2022年6月2ー4日にアムステルダム大学およびRKD共催で開催されるHNA(ネーデルラント美術学会)アムステルダム大会で発表を行い、各図書館や美術館での調査をおこなう。 2021年5月20-22日にオンラインでヘント大学で開催された『信心のための事物:近世初期ヨーロッパにおける宗教と宗具』において、Anne-Laure Van Bruaene教授から、ネーデルラントにおける聖母の聖心は「聖母の七つの悲しみ」に関連するとの教示を得た。この主題は、Dagmar Eichberger, "The Seven Sorrows of the Virgin: Spreading a New Cult via Dynastic Networks," The Nomadic Object: The challenge of World for Early Modern Religious Art, 2018, pp. 481-512 において扱われているため、これを参考にして研究の範囲を拡げたい。
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Causes of Carryover |
コロナ感染防止の観点から、海外出張が実施できなかったため。 2022年度は6月4ー6日に国際学会において研究発表の予定、8月31日ー9月3日に国際学会参加の予定があり、その前後に調査を行う。また6月の国際学会発表原稿の英文校正費、2022年3月に実施した国際シンポジウム発表原稿を出版するために、その英文校正費を予定している。さらに最終年度のために準備する論文のための資料代などを併せると、「次年度使用額」として計上した金額はすべて支出される予定である。
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