2022 Fiscal Year Research-status Report
The Imagery of sacred hearts in the Netherlands in the 15th century
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20K00199
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
蜷川 順子 関西大学, 東西学術研究所, 客員研究員 (00268468)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 聖心 / 風のイメージ / 空に浮かぶ十字架 / 聖母の聖心 / ハート形 / 見えるものと見えないもの / とりなしの祈り / 七つの悲しみ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の中心課題である《受難の道具をもつ三天使のいる磔刑のキリスト》に関連して、その中の一要素である空中の十字架について考察をすすめた。処刑具である十字架が崇敬対象になる経緯について、初期キリスト教時代から中世を経て15世紀前半までに、大きく三段階に分かれた変化を遂げたことを、蜷川順子「浮遊する十字架-15世紀ネーデルラント美術における」『關西大學文學論集』72(4)、121-146、2023にまとめた。 空中の写実的表現は、風景表象の展開と密接に関連するため、所属している関西大学東西学術研究所風景表象研究班での活動において、風景表現に関する考察も進めた。また昨年度末に実施した国際シンポジウム「風のイメージ世界」の拡大予稿集の執筆編集を今秋には刊行を予定している。 また、15~16世紀のキリスト教図像の問題に関連して、『祈りの形にみる西洋近世――茨木の銅版画シリーズ〈七秘跡と七美徳がある主の祈りの七請願〉』(関西大学出版部、2023年3月、388ページ)を上梓した。 2023年3月末から4月初めにかけて海外調査を実施した。関連する対象地域および機関は、ベルギー;王立美術館、文化財研究所、聖サルヴァトール教会他、スペイン;ラザロ・ガルディアーノ美術館、プラド美術館、ドイツ;アーヘン大聖堂宝物館、ヴァルラフ・リヒャルツ美術館、スコットランド・リズル教会などで写真撮影や資料収集をおこない、大英図書館で入手困難な資料を複写した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外調査を実施できなかったことで研究が遅れていたが、研究期間を1年延長したことで、海外調査の成果を検討する余裕が生まれ、ほぼ当初の予定通りに研究をすすめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究概要をまとめ、5月27日に第76回美術史学会全国大会(九州大学)で、口頭発表をおこなう。質疑応答の内容を踏まえて、投稿論文を『美術史』に向けた邦文、および英文で準備する。英語版を投稿するジャーナルは未定である。この段階で本研究はほぼ完成するので、研究成果刊行に向けて内容を整え、科研費の研究成果公開促進費に応募する。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症防止のため、予定していた海外調査を延期せざるを得なかったことが、次年度使用額が生じた理由である。使用計画として、すでに2022年度末から2023年度末にかけて海外調査を実施し、国内で予定している学会発表のために国内旅費を使用する。この発表内容は、国内学会誌および海外の学会誌に投稿する予定である。また、2022年度に実施した国際学会での発表内容も学会誌に投稿する予定である。そのための英文校正費、挿図用図版掲載料を使用する予定である。
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