2023 Fiscal Year Annual Research Report
The Imagery of sacred hearts in the Netherlands in the 15th century
Project/Area Number |
20K00199
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
蜷川 順子 関西大学, 東西学術研究所, 客員研究員 (00268468)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 聖心 / 聖霊と風 / 空に浮かぶ十字架 / 聖母の聖心 / ハート形 / 見えるものと見えないもの / コンコミタンス / 七秘跡と聖霊 |
Outline of Annual Research Achievements |
西欧における聖心イメージの登場は、現存資料に基づくなら、シスマを終結させたコンスタンツ宗教会議の頃だったと考えられる。フス派らのウトラキズム(両種説)を退けるコンコミタンス(併存説)が正統となり、血でもあり肉でもある聖心イメージの象徴性が重視された。また同時に、教会の存立を強固にする七秘跡の制度化において、ルネサンスの古代研究に刺激を受けた旧約の七秘跡や、秘跡をもたらす聖霊(羅:スピリトゥス)の原語に、大気や風を意味する古ギリシア語のプネウマ(ヘブライ語のルーアハ)があることが明らかになった。 このことを指摘した翻訳書バーバラ・バート『風のイコノロジー』(2022年、三元社)を元に、国際シンポジウム『風のイメージ世界』(2022年3月)を実施し、その成果である『風のイメージ世界』(2023年、三元社)を監修・刊行した。また同書で「ロヒール・ファン・デル・ウェイデンの風の表象」(149-175頁、WEB英語版)を発表し、15世紀ネーデルラントにおける聖心イメージの登場がロヒール周辺にもある可能性を高めた。ロヒールの師である「フレマールの画家」周辺では、本研究課題である作品(ブリュッセル王立美術館)が制作されており、第76回美術史学会全国大会で「十字架と聖母の聖心-「フレマールの画家」周辺で制作された《受難の道具をもつ三天使がいる十字架のキリストをめぐって-》」として発表した。本成果は現在刊行準備中である。 七秘跡に関しては、17世紀転換期前後にイエズス会によってもたらされた茨木市立文化財資料館蔵の銅版画シリーズ研究において、16世紀における意味を考察し、『近世初期にキリスト教宣教師がもたらした銅版画の役割』として出版した。聖心に代表される、見えないものの見えるものへの仮託として、聖母、風の表象、七秘跡の制度化などを繋げる自然や風景表象を扱った『領域のフレーミング』を刊行した。
|
Remarks |
Chapter 6 The Representation of Wind by Rogier van der Weyden Junko Ninagawa (Professor Emerita, Kansai University, Japan)
|
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 風のイメージ世界2023
Author(s)
蜷川順子、『風のイメージ世界』刊行実行委員会
Total Pages
276
Publisher
三元社
ISBN
978-4-88303-578-6
-