2021 Fiscal Year Research-status Report
京金工・大月光興の研究-「文人金工」像の確立のために
Project/Area Number |
20K00205
|
Research Institution | Administrative Agency for Osaka City Museums |
Principal Investigator |
内藤 直子 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪歴史博物館, 係長 (70270725)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩佐 伸一 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪歴史博物館, 主任学芸員 (70393288)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 刀装具 / 後藤家 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度も所属機関の所在地が緊急事態宣言下となり、市の方針もあり県境をまたいでの調査活動ができない日々が長く続いた。そのような環境下でもあったため、今年度は文字資料主体で研究が進めやすいことから、大月光興と同じ京都で活躍した京後藤家について深め、その文化的背景を探るという計画に変更した。 具体的には国会図書館の遠隔複写を活用して資料を取り寄せ、また緊急事態の合間を縫って行った金沢・玉川図書館および刀剣博物館での後藤家文書調査、本阿弥家書状調査などを実施し、各大学のウェブサイトに上がっている史料類も参照した。作品調査については、五島美術館が所蔵する京後藤家刀装具の悉皆調査が実現できたことが最大の収穫であった。 五島美術館が所蔵する京後藤家の刀装具は加賀前田家伝来品である。加賀前田家には京後藤の勘兵衛家が出仕しており、その収集管理に大きな影響を果たしていたことは、玉川図書館所蔵の後藤家文書により裏付けることが可能となった。また、同文書には五島美術館所蔵刀装具に対応する作品情報が含まれており、両者が揃ったことにより情報の突合せと作品考察が可能となった。検討はまだ作業半ばではあるが、勘兵衛家初代の覚乗作品に上代後藤宗家特有の輪郭線が認められること、作品の伝来経緯が明らかであることから京後藤家の刀装具作例の基準作となしうる重要作例であることが明らかとなり、銘や名乗りの変遷時期も絞り込めつつある。次なる課題は、加賀前田家と京都の後藤勘兵衛家との間に存在する、深い信頼関係が何に由来しているのかという問題である。それを解くカギは法華信仰にあるのではないかとの仮定に基づき、その背景についても現在調査を続けているところである。 なお大月光興自体についても新たな作品を複数確認している。遠方のため調査時期を逸しているものもあるが、次年度以降のどこかで調査を実施できればと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大月光興という当初の調査対象からはやや遠ざかったが、コロナ禍でも調査可能な対象として選んだ京金工の後藤家についての調査が飛躍的に進んでいる。また、調査の実施は遅れているが大月光興の作品情報は集まりつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍により軌道修正で実施している京後藤家研究については想像以上に順調に進捗し、新たな知見を多数得つつある。あと半年程度で京後藤家研究は一区切りできそうであるが、そのころにはコロナも収束するであろうことを見込み、1年以内には本来のテーマである大月光興研究に戻りたいと考えている。特に、いくつかの重要作例について所在情報を取得しているため、それらの作品調査を集中して行いたい。
|
Causes of Carryover |
緊急事態宣言が長く続いたため、県境をまたぐ調査活動ができない期間が続き、予定していた調査活動をすべて行うことができなかったためその旅費や関連費目に残余が生じた。今年度以降コロナ禍が収束すれば調査旅費等で使用していきたい。
|