2021 Fiscal Year Research-status Report
学術標本の制作技法研究を通じた復元ー19世紀の石膏製数理模型と芸術の連動ー
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20K00208
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊池 敏正 東京大学, 総合研究博物館, 特任助教 (10516769)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 彫刻 / 学術標本 / 文化財 / 修復 / 復元 / 3D / 博物館 / 立体造形 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年に引き続きコロナウイルスの影響が継続しており、海外研究機関への出張は困難な状況であった。しかしながら、初年度に計画し延期中となっていた、フランスでの展覧会を実施し、研究活動を通じた国際的な交流に取り組んだ。今年度に実施した展覧会は、ヨーロッパ最大のアジア美術コレクションを収蔵するフランス国立ギメ東洋美術館にて開催したものである。ギメ美術館は、アジア地域の現代美術を紹介する展覧会を定期的に開催しており、従来の収蔵品展示をするだけでなく、様々な方法でアジア美術の紹介を積極的に推進している美術館でもある。本展覧会は、当初2020年の東京オリンピックに合わせて開催を計画していたが、コロナ禍の影響もあり、1年延期し、2021年7月より開催したものである。様々な文化事業が、コロナ禍により中止するという判断が下される中、延期しながらも開催出来た事は、最終年度へ向けて大きな成果となった。コロナ禍の影響を大きく受けたパリの状況を踏まえつつも、2021年のギメ美術館にける同様の企画展と比較した場合に、最も多くの来場者を集めた展覧会であった。会期前後は、日本、フランスの両国内にてコロナ禍の影響が続いていため、オンラインでの打ち合わせを入念に進め、現地の協力者と連携しつつ、会場構成を検討した。会期中の来場者数も、16000人を超え、複数のメディアに取り上げられるなど、大きな波及効果が得られる展覧会となった。また、学術標本の復元研究は、昨年度から引き続き実施している。復元制作に伴い、模型を拡大して再制作する取り組みも進めている。これらは、最終年度に公開を計画しており、研究成果を広く公開できるよう努める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、コロナウイルスの影響により、海外学術調査が実施できていない状況ではあるが、初年度に計画していた、フランスでの展覧会を開催する事ができた。数理模型を所蔵する代表的な研究機関であるアンリ・ポアンカレ研究所と連動した展覧会でもあり、今後の研究活動を進めるにあたり、非常に大きな成果となった。東京大学が所蔵していない数理模型についても、フランスにてアンリ・ポアンカレ研究所と連動し3D計測を実施していく事で、国内で新たな数理模型の制作が可能になる。また、昨年から準備している展覧会「仏像工学~追体験と新解釈」は、本年度からインターメディアテクにて公開している。自然史標本が多く展示されている中、仏像の模刻作品を展示することは、インパクトも強く非常に大きな反響を得る事が出来ている。そのため、作品の入れ替えを行いつつ、会期を延長している状況である。本企画は、文化財の模刻を通じた新たな知見を公開することを目的としており、非常に効果的な研究活動の情報発信でもある。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度には、本研究による成果の一部をスウェーデン・ストックホルムにて公開する計画があり、現在のところ順調に進んでいる。今後のコロナウイルスの状況により計画の変更がある事も想定されるが、今年度と同様に、オンラインでの打ち合わせを重ねつつ進めていく予定である。また、昨年のギメ美術館での展覧会が好評であったため、フランス・アンリ・ ポアンカレ研究所での展示も計画している。この企画では、数学と芸術の交流が見込まれる展示となり、本研究のテーマである学術と芸術の連動が期待できる。海外学術調査としては、初年度に計画していたアメリカ、フランスでの調査を実施していく計画である。国内では、「仏像工学~追体験と新解釈」が継続中である。インターメディアテクでは、「仏像工学~追体験と新解釈」に加え、数理模型を拡大し展示する計画も進めており、これまでの成果を踏まえつつ準備していく予定である。また、3D計測機の移動が困難な場合に写真画像を参考にしつつデータを集積する方法も検討し、学術標本の復元研究を継続して進める予定である。
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Causes of Carryover |
旅費での支出が、今年度は無いため次年度使用額が生じてしまった。来年度は使用する計画がある。
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