2021 Fiscal Year Research-status Report
微分音を含む音高の組織化と音響の類型化に基づく作曲方法論
Project/Area Number |
20K00209
|
Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
折笠 敏之 東京藝術大学, 音楽学部, 准教授 (80751479)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 作曲方法論 / CAO(「コンピュータ支援作曲」) / 音律 |
Outline of Annual Research Achievements |
引き続き、先行諸研究の確認、関連資料の整理、及び関連の作品素材の設定と、それを精査しながら構成(創作に応用)していくための小規模なコンピュータ・プログラムの試作に当たった。 特に今年度は、改めて音律に関する先行研究をいくつか確認し、その音組織内から素材としての「音群」を取り出して扱う際の方法、そしてそれを楽曲として「生成」する際の具体的な方法(通常の創作の文脈に基づくものから、確率過程や機械学習的な手法等の類型)の検討に当たった(以前からの継続であるが、これは以後も同様である)。 より具体的には、前研究課題より継続している、n平均律(n-tone equal temperament, n-TET)的な処理、また、伝統的な(比、有理数による)音律から発展した現代の音律等での特徴的な音組織を、いかに統一的な環境に落とし込んで扱い、実際の創作に際して、有機的に音楽的素材として成立させるかについての選択肢の考察である(いずれにせよ実際の創作で扱う際には、何らかの段階で近似的な検証、解析となる部分が生じる)。 本研究課題関連での具体的な研究成果(本研究の場合、作品の制作・演奏)の発表機会をまだ持つことが出来ていないことは、やはりこのコロナ禍の甚大な影響である。研究計画として、当該年度内には、海外(主にIRCAM「フランス国立音響音楽研究所」等)での調査・研究、資料収集、作曲家・研究者との意見交換等を予定していたが(前年度同様)、COVID-19感染状況の影響継続により、それも中止せざるを得ないことなった。 以上のように、当該年度は次年度(最終年度)に予定する制作、何らかの形態での発表に向けての文献・理論研究と試作を中心に行ない、具体的に目に見える成果というよりは、止むを得ず、今後の機会への準備を進める対応とった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19の影響が前年度から継続し、当初の研究計画上で当該年度に予定していた海外での調査・研究、進捗の段階に応じた試作に基づく作品発表機会の開催は困難な状況で、そのいずれについても(前年度同様に)見送らざるを得なかった。 本研究課題の開始後、その当初より日常的に感染対策を取りつつの慎重な計画を検討せざるを得ない状況下、何か機会を設定するに際して手順が通常に比べ著しく増大している。その中で研究成果を発表するため人員を動員し、例えば、リハーサル環境一つを整備するための感染対策にも(引き続き)一定以上の人件費や物資への支出が発生する。物理的な作業量の増加に加え、そういった資金的な面でも大きな負担が発生することから、計画を検討すること自体に一定の限界があり、前年度同様に具体的な機会の開催を中止をせざるを得なかった。 以上のことから、準備を進めつつも実際の発表を行えていないことから、「遅れている」ものと評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる次年度は、これまでの期間の試行的な小規模の制作(素材的な断片、生成物)をもとに、具体的な作品としてアウトプットすることを主眼とするが、場合により演奏会とは別の手段で、年度内に何らかの成果を形にすることを試みる。 引き続き、研究計画で記載しているような海外での調査・研究、資料収集等も視野に入れるが、渡航に際して、所属期間内も含めた手続き的な制限が継続することも見込み、状況に応じて、割り当てられた予算を、(上記のような)何らかの機会開催または別の形での作品発表に際しての、経費増の補填として柔軟に支出することも念頭に置く。
|
Causes of Carryover |
前年度からコロナ禍の影響が継続したことにより、研究課題開始時に予定していた複数回の海外での調査・研究等や、研究成果の発表機会として検討していた演奏会等の機会を中止することを余儀なくされたため、もともと不足していた物品費へと部分的にまわして端末環境の強化や文献等に充てたが、次年度以降の機会の可能性も考え、前年度同様、比較的大きな額を繰り越すこととなったため。 次年度は最終年度となるため、状況を注視しつつ、それに応じた対応を取った上で、可能な限り、何らかの形での成果発表を試みる。また、所属機関との十分な調整が前提となるが、海外での調査を行う可能性、見通しが立つような場合は、そのような機会を持つことも視野に入れる。
|