2021 Fiscal Year Research-status Report
1970年代の日本美術における音ーー「日本美術サウンドアーカイヴ」の実践
Project/Area Number |
20K00213
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Research Institution | Aichi University of the Arts |
Principal Investigator |
金子 智太郎 愛知県立芸術大学, 美術学部, 准教授 (20572770)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 美術における音 / 戦後日本美術 / アーカイヴ / 音響技術 / サウンド・アート / サウンド・スタディーズ |
Outline of Annual Research Achievements |
戦後日本美術における音をめぐる本研究は、一次資料の調査にもとづく発見的なアーカイヴであり、研究成果として展覧会の開催と論考の執筆を行う。しかし、昨年度と同様、新型コロナウイルス感染症の広がりのために、調査においても成果発表においても困難が生じた。また、研究拠点が愛知県立芸術大学に移ったため、環境の再構築に大きく時間を費やした。そのため、予定していた計画を大幅に変更せざるを得なくなり、この状況のなかで実現できる調査、成果発表のみに取りくんだ。 実現できた調査、成果発表は以下の通りである。河口龍夫、ぷろだくしょん我S、藤原和通、堀浩哉、上田佳代子、堀えりぜによる70年代作品の一次資料調査。調査の成果発表として次の企画協力、口頭発表、論考の執筆を行った。河口龍夫個展「1971年の172800秒から2021年の345600秒へ」企画協力。口頭発表 “Dismantling Environment: Hori Kosai’s “Report” series” “Home Exhibition as an Institutional critique: Ueda Kayoko and Watanabe Erize’s Tautology Series”(ともにシンポジウム“Interrogating Ecology: 1970s Media and Art in Japan”)。論考“Kazumichi Fujiwara,” (Polyphone: Mehrstimmigkeit in Buld und TonI)、「「ぷろだくしょん我S」と自主制作メディア」(『REAR』)。 加えて、70年代日本美術と音の関わりの背景となる、同時代の音響技術文化の研究を行った。その成果の一部として論考「市民による音づくり──映画評論家、荻昌弘のオーディオ評論」を『音と耳から考える──歴史・身体・テクノロジー』に寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
高齢の作家に対するインタビューや、研究成果として展覧会の開催、海外の研究者との共同調査などを予定していた本研究は昨年度同様、新型コロナ感染症の影響を受けた。また、研究拠点の移転のために、研究環境の再構築の必要があり、関東での調査はやや困難になった。 以下の調査は予定を延期した。鶴岡政男、松澤宥、嶋本昭三、ヨシダミノル、水上旬、野村仁、永松勇三、吉田秀樹、カワスミカズオによる作品の一次資料調査。上田佳世子と渡辺恵利世の活動をふりかえる展覧会は開催を延期した。70年代日本の音響技術文化をめぐるインタビュー調査も実施を見送った。 さらに、以下の国際的共同研究も予定を延期した。シカゴ美術館付属美術大学教員Louis Mallozziとの日本のサウンド・アート共同調査。レンヌ第二大学講師Anne Zeitzとの藤原和通作品の共同調査。 こうした大幅な研究計画の変更にともない「日本美術サウンドアーカイヴ資料展」の企画や、海外での成果発表、単行本の執筆も遅れている。上記の研究はいまだ見通しの立たないものもあるが、今後の状況に応じて感染拡大防止に努めながら実現させたい。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度より続けている愛知県立芸術大学における研究環境の再構築を継続する。令和2年度から継続する調査、再開する調査を新型コロナウイルスの感染拡大を避けながら慎重に進める。 今後も展覧会やイベントの開催は困難が伴うことが予想されるため、状況に応じて、安全に実行できる企画を計画したい。延期していた「日本美術サウンドアーカイヴ──上田佳世子、渡辺恵利世「トートロジー」シリーズ」を6月に開催する。また、柴田雅子《AFFECT-GREEN Performance》のエディションを制作する。レンヌ第二大学講師Anne Zeitzとの藤原和通作品の共同調査を再開する。さらに、これまでの成果をまとめ、発表する作業にはより多くの時間を割く。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の広がりに応じて、一次資料調査や展覧会の開催などの研究計画を変更したため。研究拠点の移転にともなう環境の再構築のため。令和3年度以降も感染拡大の防止に努めながら延期した研究を実現させたい。
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