2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K00215
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
清水 香 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (30599436)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 泥漿 / 磁土 / 成形技法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、泥漿を用いた現代的成形技法における諸問題の解決を目指し、泥漿に適している陶磁器用坏土の分析を行った。本研究における革新的技法の成形物は、極力厚みを均一につくる陶磁器成形技法と比べ、厚みのばらつきが大きい。昨年度までの研究において、素地の薄い部分と厚い部分の収縮速度の違いから亀裂が生じることや素地が薄い部分に大きな負荷がかかり焼成中に垂れ下がってくることを問題点としてあげてきた。そこで、流動性を保ちながら目的の温度で焼固する磁器土にはどのような成分が適しているのか調査するため、日本で使用されている磁器土の組成分析を鹿児島県工業技術センターで行った。磁器土の成分を比較した際、陶石質の磁土と長石質の磁土に分けることができる。まずは、泉山陶石場をもつ西日本の磁器産地である佐賀県有田焼で使用されている磁器土の調査をするため、佐賀県嬉野市の陶磁器原料製造元を訪ね、磁器土の資料収集と佐賀県有田町において成形技法の調査、長崎県波佐見町において成形技法の調査を行った。その際、佐賀県窯業技術センターと長崎県窯業技術センターで革新的技法に対する技術相談をし、焼成時に石膏などの支持体を用いる方法や焼成温度を下げて低火度釉を用いる方法を試す必要があることが分かった。これに対し、東日本の磁器産地である瀬戸焼で使用されている愛知県瀬戸市の磁器土を収集し、鹿児島県工業技術センターで有田焼の磁器土と瀬戸焼の磁器土を蛍光X線ガラスビード法により含まれている成分の調査をした。分析結果から、有田焼は陶石質磁器土であり、瀬戸焼きは長石質磁器土であることがわかった。 今後は、まだ行えていない両磁器土の耐火度試験と、粒度分析を長崎県窯業技術センターで行う予定にしており、分析値から陶石質磁土と長石質磁土を比較し、流動性と可塑性を併せ持つ泥漿にはどちらが適しているのか比較、検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、陶磁器産地である佐賀県有田町と長崎県波佐見町へ赴き、陶磁器原料の調査・収集を行った。有田焼と波佐見焼で使用されている磁器土は、佐賀県嬉野市で製造しており、製造元で磁器原料の工場と磁器土の焼成色見本等を見ることができた。また、佐賀県窯業技術センターと長崎県窯業技術センターで革新的技法の技術相談をしたところ、長崎県窯業技術センターでは引き続き技術相談と鹿児島県工業センターではできない専門的な化学分析を引き受けてくださることを確認した。また、資料収集した磁器土を鹿児島県窯業技術センターで蛍光X線ガラスビード法によって分析した。本来は耐火度試験や粒度分析まで行う予定であったが、現在、鹿児島県工業センターには窯業部門の専門員が不在であることから、他県に依頼するために時間を要し、今年度は実験することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は新型コロナウィルスの感染拡大による移動制限がなくなってきたことから、ようやく県外への調査へ行くことができた。今後は、遅れている実験を長崎県窯業センターや鹿児島県工業センターで行うとともに、陶器産地と磁器産地の成形技法の精査も行っていく。 実験内容については、耐火度や粒度の違い、解膠剤の種類と添加量、焼成色見、金属酸化物の含有量を中心に実験結果を数値化する。また、成形技法の精査の方法として、資料館や窯業試験場、作家工房の訪問により、伝統的に受け継がれてきた技法と、量産を求めた工業的技法の2つの面から、その役割と方法、適した材料について調査する。その際、課題を多く抱えている産地の現状も聞き取り調査する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大により、県外移動を自粛していた期間のしわ寄せがあったためである。陶磁器産地への調査が遅れており、次年度使用額は、まだ行くことができていない滋賀県の調査費用と再訪問予定の長崎県への調査費用に充てる予定である。
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