2021 Fiscal Year Research-status Report
実地調査と科学分析に基づく民俗芸能衣装の研究―三信遠地方の翁―
Project/Area Number |
20K00220
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Research Institution | Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
角谷 彩子 文化学園大学, 造形学部, 助教 (30862677)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 民俗芸能 / 衣装 / 翁 / 霜月神楽 / 田楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は民俗芸能の衣装に着目し、実物調査と科学分析を通して、衣装の製作と意匠に関する記録資料の蓄積、および衣装の相互比較を行うことを目的としてい る。 2020年度は新型コロナウイルス感染症の拡大により、実地調査の計画を中止したため、研究対象となる愛知・長野・静岡県「霜月神楽」と「田楽」に関する文献資料の収集と、電話による衣装の聞き取り調査を実施した。2021年度もコロナ禍の状況が続き、計画していた調査の大部分は中止となったが、愛知県設楽町の「津具花祭」と「田峯田楽」の実地調査を実施することができた。 津具花祭の現存する衣装道具は、明治25年(1892)の火災で焼失した後に揃えたもので、焼失前の衣装の形式を継承したものかは定かでない。基本的に衣装は古いものを参考に製作されるが、まれに奉納や寄贈された衣装が入ることで模様や形が変わることもあったようである。「花祭」の衣装道具については、愛知県東栄町や豊根村のものも含め、包括的な調査が必要である。 田峯田楽の翁衣装のうち、中綿入りの長着は①大正期のもの②昭和11年(1936)製作のもの③約40年前に製作したものの3点あるとされるが、②の実物は確認できなかった。①は胸部と背中心に田峯城の紋、③は田峯城紋のほかに後肩部に鶴と亀の模様が入っていた。古い衣装は手作りのものが多いが、昭和期頃から徐々に専門業者に衣装の製作を委託するようになっており、このことが衣装の模様の変遷に関係したのではないかと推測している。また田峯田楽で使用される黒色の切顎翁面は、色や形態共に珍しいため、周辺地域の田楽翁面との比較調査を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍のため、見学を予定していた祭りや民俗行事は全て中止となった。2021年度は愛知県設楽町2カ所の実地調査を実施出来たが、感染状況の悪化により、ほかに計画していた調査は断念した。2020年度から引き続き、研究の柱となる実地調査が進んでおらず、進捗状況は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
聞き取り調査の対象者は、多くが高齢者のため、メールやオンラインによる調査が難しい状況である。今年度も新型コロナウイルス感染症の状況を見定めつつ、可能な範囲で実地調査の実施を目指す。 今後の研究の推進方策として、2022年度もコロナ禍により調査が難航することが想定されるため、研究期間の延長を申請する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年4月より新型コロナウイルス感染症の流行拡大の影響を受け、計画していた実地調査の大部分は実施できていない状況である。そのため予定していた旅費・科学検査費用等の経費を翌年度に繰り越すことになった。
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