2021 Fiscal Year Research-status Report
Restoring the Artistic Value of Digital Images Based on Line Drawing Extraction Following Oriental Painting Tradition
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20K00228
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
麻生 弥希 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (90401504)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 文化財 / 線描抽出 |
Outline of Annual Research Achievements |
文化財を記録して後世に継承することは重要な課題であるが、膨大なデータとして継承するに留まらず、内包する情報を読み解くことも必要な課題と考える。特に劣化が進んだ作品や、オリジナルが現存しない作品などは、残された記録が作品を知る唯一の手掛かりであるが、ポジフィルムなどの記録媒体さえも劣化の危機に瀕している状況も散見される。こうした状況から記録の再調査と並行して、現代の技術で可能な限り情報を読み解く事も喫緊の課題である。 本研究では特に東洋絵画の線描に着目して文化財の記録から線描を抽出することを試みる。東洋絵画は粉本と呼ばれる、絵師が線描を写して図像を継承する伝統があったが、写真の技術が浸透するに従い衰退した。写真は描き手の癖がないことや、細部まで記録することに優れている一方、図像は損傷や剥落と同列に記録される。現代では文化財の記録に加工をすることはタブー視される傾向にあるが、図像の継承という観点からは古来は絵師が情報を整理して継承していたと言える。すなわち線描は図像を黒、そうでない部分を白で識別する最も原始的なデジタルデータであり、高度な情報伝達手段と言えるのではないか。古来は絵師が行っていた情報処理を現代の記録にも行うことで内包されていた情報が明らかになるケースも存在すると考える。 本研究の対象作品は東京藝術大学付属図書館に所蔵される法隆寺金堂壁画第6号壁コロタイプ印刷として、線描を抽出する研究を進めている。 同コロタイプ印刷を観察すると、1:図像の状態がよく線描が明確に分かる部分、2:図像は剥落しているが線描を復元できる程度に痕跡が残るか、復元の参考になる模写などの資料が残る部分、3:剥落が著しく復元は困難な部分があることが分かる。1に関しては線描の抽出、2に関しては痕跡からの復元、または模写などに記録がのこる線描を融合する、3に関しては空白として白描図像を作成する方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
線描抽出の作業が非常に時間がかかることと、痕跡の残り方にも段階があり、分類が当初の予定より単純でないことなどが影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
同作品が記録された時点での保存状態の段階によって、レイヤーに分けて線描抽出の作業を進める予定である。本研究については同コロタイプ印刷の元となるガラス乾板の調査が現在関係機関において進行中である。本研究の発表に関しては慎重に有識者の判断を仰ぐ必要がある。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響から調査のための出張を控えたことと、研究が謝金が発生する段階まで進まなかったことから次年度使用額が生じた。今後は現状をまとめた段階で有識者に助言を仰ぐ予定である。
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