2020 Fiscal Year Research-status Report
「アートを介した社会課題の理解」のための探求型鑑賞モデルの開発と実践研究
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20K00232
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小川 真司 (才士真司) 岡山大学, 教育学研究科, 特任准教授 (40774849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤木 里香子 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (40211693)
田村 朋久 大手前大学, 総合文化学部, 非常勤講師 (00836637)
伊藤 駿 岡山大学, 教育学研究科, 特任助教 (30839022)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 対話探究型鑑賞モデル / 清志初男 / 田中憲一 / 豊島 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度から2021年度前半の活動は、「対話探究鑑賞モデル」を、(1)熊本地震で被災した油彩画作品の修復プロジェクトを通して「震災記憶と地域文化の継承」を試みる熊本県御船町、(2)元ハンセン病患者が制作したアート作品を展示する長島愛生園歴史館、(3)近代化による経済基盤の変化とその影響をアート施設の設置背景とする香川県直島などのアート施設。の3つの視点で導入するために、各地域に赴き、各アート作品とアートプロジェクトの特性分析をすることであった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、対面での取材が不可能になったため方法を変更し調査にあたった。それぞれについて記述する。(1)現地で活動をしている(一社)アートネットワーク御船のメンバーが高齢であることから、直接取材をすることはせず、作品に関する資料の分析や、電話での取材を中心に行った。 (2)7月に、72年間岡山県瀬戸内市の長島愛生園で暮らした画家、清志初男氏本人に取材を実施した。11月には作品の所蔵者である長島愛生園歴史館協力のもと、「碧と祈る 洋画家・清志初男遺作展」を、3箇所で実施した。・山陽新聞社さん太ギャラリー / 2020年11月21日から12月6日・岡山大学付属中央図書館2階 / 11月23日から2月28日・国立療養所長島愛生園「祈りのギャラリー」 / 12月8日から2月28日 なお、本展は岡山を拠点に活動する非営利徹底型の一般社団法人「クニヨシパートナーズ」と連携し、独立行政法人日本芸術文化振興会が行う令和2年度「文化芸術活動の継続支援事業」に採択されている。(3)は、豊島(香川県土庄町)で発生した産業廃棄物不法投棄事件「豊島事件」について、同問題に対応する産業廃棄物豊島住民会議の石井亨氏を取材した。取材時に撮影した映像は、「オンライン体験ツアー」が可能な動画資料として制作している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究計画では、2020年度から2021年前半に(1)から(3)のプロジェクトの地域である熊本県御船町、岡山県瀬戸内市、香川県直島に赴き、現地取材をする予定だった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、直接取材する機会が減少した。そのため、2020年度に予定していた「対話探究型鑑賞モデル」開発のための取材方法として、「オンライン」を導入した。このための機材整備を行った上で、作品とアートプロジェクトの特性解析を行なった。 (1)緊急事態宣言の発令等により現地での取材はできなかった。また、現地に解像度の高いカメラなどの機材が揃っておらず、オンラインを使用しての取材が難しいため、資料の分析が中心となった。 (2) 清志初男氏への取材中、展覧会の開催と会期中に「対話探求鑑賞モデル」を行うことが決まった。しかし、8月に清志氏が逝去したことで、急遽、遺作展として開催することとなった。本人に取材することができないため、先行研究や関係者に調査をすると、清志氏の作品に関するまとまった記録がなく、整理されていないことが判明した。これを受け、氏の生前の関係者や知人など幅広く調査することを目的に、展覧会を開催した。取材や展覧会開催に当たっては、PCR検査を活用して行った。 (3)島内の医療体制が脆弱なため、大規模な取材を行うことはできなかったが、作品の背景にある、豊島事件について詳細に取材し、記録することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年前半は、引き続き、それぞれの作品の取材と分析を行う。後半は、感染状況をみて、国吉康雄作品で実施した美術館やオンラインを用いた「対話探究鑑賞モデル」の予備実施を検討している。 (1)2021年には新型コロナウイルスのワクチン接種が始まる。(一社)アートネットワーク御船メンバーのワクチン接種後に、現地に伺い、取材を行う。 (2)展覧会実施で得た情報に関する追加取材を行う。 (3)アート作品の取材を進め、情報を整理し、鑑賞モデルの開発を行う。 次年度はワクチン接種が始まるため、Zoomなどのオンライン併用しながら、積極的に現地で取材を重ね、調査を進めていきたい。また、今後の成果報告の発表は、美術科教育学会で行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
2020年度は、感染症拡大の影響で、(1)から(3)の地域に行くことが難しかったため、2021年度は、ワクチン接種状況をみながら現地で取材を行う。このため、交通費として使用する。また、引き続き調査のために専門家に取材することになるため、謝金として使用する。加えて、2021年度は、「対話探究鑑賞モデル」を開発し、予備実施を行うことを計画している。同モデルを実施するために行う、展覧会の運営などを、一般社団法人クニヨシパートナーズに業務委託するために使用する。
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Remarks |
研究発表:「『碧』と祈る 洋画家・清志初男遺作展」開催時期:2020年11月21日から2月28日 開催場所:山陽新聞社さん太ギャラリー / 2020年11月21日から12月6日 岡山大学付属中央図書館2階 ムラタアカデミアエリア / 2020年11月23日から2月28日 国立療養所長島愛生園「祈りのギャラリー」 / 2020年12月8日から2月28日
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Research Products
(2 results)