2022 Fiscal Year Research-status Report
「アートを介した社会課題の理解」のための探求型鑑賞モデルの開発と実践研究
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20K00232
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小川 真司 (才士真司) 岡山大学, 教育学域, 特任准教授 (40774849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤木 里香子 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (40211693)
田村 朋久 大手前大学, 総合文化学部, 非常勤講師 (00836637)
伊藤 駿 岡山大学, 教育学研究科, 特任助教 (30839022)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国吉型・対話探究モデル / 清志初男 / 田中憲一 / 直島 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、「国吉型・対話探究モデル」(以下、本モデル)の検証を進めるため、(1)平成28年熊本地震で被災した油彩画作品の修復プロジェクトを担う「田中憲一の画を救う会」による企画展示「被災/レスキュー」(熊本県立美術館分館 / 2023年)、(2) 長島愛生園歴史館に収蔵される元ハンセン病患者が制作した絵画作品調査のため関係者との面談、(3)近代化の影響をその設置背景とする香川県の離島のアート施設に赴き、① 各プロジェクト、各施設への「コロナ禍の影響」も踏まえた再取材を実施した。 これと同時に、② 本モデル検証のため、岡山大学中央図書館内で清志初男作品とハンセン病問題に関する資料を国立療養所長島愛生園から借用し、関連図書と共に展示。③ この展示に関連し、6月3日にオンライン形式で岡山大学の12学部148名に対して鑑賞調査を実施し、8割を超える学生から変化があったこと。かつ、好意的な意見を得た。本モデルを使用した作品鑑賞により、絵画とその背景への理解が深まり、本モデルの体験前とで作品への印象・理解に変化があったという結果を得た。 また、④ ニューヨーク市立大学の山村みどり助教(ニューヨーク近代美術館講師兼務)を招聘し、合同で直島をフィールドとした対面での検証を、岡山大学の9学部19名の学生を対象に行った(2023年1月14日)。また、⑤ 医療従事者10名を対象とした本モデルの検証を宅別企画展「名古屋市美術館コレクション展」(岡山県立美術館 / 2023年2月25日)で行った。 これらの結果を受け、⑥ ニューヨーク近代美術館(MoMA)、ニューヨーク公共図書館、ニューヨーク市立大学の鑑賞プログラムに参加。その動向を取材し、本モデルに対する専門家による助言を受けた。MoMAでは本モデルと同館が実施する教育プログラムとの共通点を指摘、評価され、継続的に意見交換をすることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年の成果は、大きく二つある。 第一に、2021年度に実施した美術展覧会「And Recovering Them そして、それらを回復する」で得られた成果を基盤に、「国吉型・対話探究モデル」の精度を上げたことである。2021年の展覧会での本モデルの実施によって明らかになった参加者の変化から、作品を見せる時間や内容について取捨選択を行った上で鑑賞調査を実施した。本年度はオンライン手法での実施であったが、本モデルに対する発見や参加者の変化があり、有用性の確認をすることができた。 第二に、本モデルの由来でもある洋画家国吉康雄(1889-1953)を、アメリカ合衆国で最初に「アメリカ代表する画家」とし、10万点以上ある所蔵作品を活用して教育プログラムを開発し続けるニューヨーク近代美術館に私たちの手法を評価されたのは大きな成果だといえる。国内外の鑑賞プログラムの取材として訪問した2館ではどちらも好評であった。ニューヨーク近代美術館とは引き続き意見交換が行われることとなり、ニューヨーク公立図書館とは、図書館が実施している教育プログラムの展示を岡山大学で実施する案が共有されている。 加えて、2022年12月から、本モデル開発者が企画に参加する茨城県近代美術館、ヤマト運輸(株)との共同企画展(2023年10月24日から)の開催が決定され、対応した本モデルによる教育プログラムの開発に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年前半は、岡山大学中央図書館でも展示を継続し、2022年にオンライン形式で実施した「国吉型・対話探究モデル」の鑑賞調査を、対面形式で100名以上の学生を対象にして実施することを計画している。 2023年度後半は、2020年からの研究成果として、映像制作と展覧会活動を検討している。映像の公開は、2022年に岡山大学内に新設された5DLab Media Galleryで行い、学内での展覧会も併せて実施できるように調整をしている。 学外では、茨城県近代美術館での展覧会への参加を通して、本モデルの発信に努める。
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Causes of Carryover |
(1)から(3)の熊本、岡山県瀬戸内市、直島や豊島への追加取材のための旅費に使用する。対面で実施する「国吉型・対話探究モデル」の調査用資料に使用する。ニューヨーク近代美術館などの外部組織への取材費として使用する。岡山大学中央図書館と同5DLab Media Gallery、茨城県近代美術館特別展覧会での映像公開と展示準備費用やパネル制作費、原稿料、専門家監修謝金等に使用予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Book] 教育科学を考える2023
Author(s)
小川容子・松多信尚・清田哲男
Total Pages
370
Publisher
岡山大学出版会
ISBN
978-4-904228-77-7