2021 Fiscal Year Research-status Report
20世紀日本におけるフランス音楽文化モデルの存在と役割―箕作秋吉評価を出発点に
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20K00234
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
安川 智子 北里大学, 一般教育部, 講師 (70535517)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 箕作秋吉 / 20世紀日仏交流 / ブルゴー=デュクドレー / ロマン・ロラン / 音楽学 / ヴァンサン・ダンディ |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目にあたる2021年度は、前年度に着手した調査や研究をさらに深め、一定の成果を得ることができた。具体的には、20世紀初頭のフランスにおける音楽文化モデルが、確実に日本へと伝播しているという糸口を、複数の研究テーマを並行して進めることで見出すことができた。 前年度に行った口頭発表を論文としてまとめる過程で、1. ロマン・ロランやヴァンサン・ダンディ、フーゴー・リーマンら、独仏の音楽学者を中心とした国際的音楽学コミュニティが20世紀初頭に形成されたこと 2. 1920年代にフランスが中国や日本など、対東洋の文化的政策を重視していたこと(その一例が在日フランス大使であったポール・クローデルによる諸活動であること) 3. 箕作秋吉の戦前から戦後にかけての活動は、ヨーロッパ側からの東洋への接近をうまく利用した日本の音楽文化の国際化に大きく寄与したものであったこと、こうした一連の流れが明らかになった。 また博士論文以来の自身の研究テーマであるブルゴー=デュクドレーとギリシャの旋法性に関わる研究と、本研究が見事に繋がる証拠を見出せたことは、2021年9月にモスクワで行われた国際学会(共同発表、オンライン参加)と、12月にパリで行われた国際シンポジウム(オンラインで参加)をまとめる過程での大きな成果である。 これらの研究成果は、すでに2021年に公表済みの論文2本のほか、研究レポート1篇(2021年、2022年に連載で刊行済み)、及び2022年から2023年に出版予定の共著書籍内論文で公表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
仮説に基づき研究を進めた結果、一定の証拠が得られたという点では順調である。しかし1年目のコロナ禍の影響は後を引いており、研究成果の公表という点ではいずれもやや遅れが見られる。一方で執筆・入稿は一つずつ完了しているため、総合しておおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進んでいるが、当初予定していた日本におけるインタビュー等の手法は、コロナがまだ完全に収束していないということ、関係者の高齢化、研究協力者の立場の変化等もあり計画通りに進めることは難しいと感じている。対象の大きさとこれまでに得られた成果を考えると、総合的に研究成果をまとめるための一定の時間が必要であると見込まれるため、現在のところ、研究期間を1年延長する方向で考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度も国際学会に参加したが、いずれもコロナ禍を鑑み、オンライン参加となったため、旅費が未使用となった。徐々に対面での学会等が復活してきていることもあり、研究期間の1年延長も考慮しつつ、国際シンポジウムの企画・実施、海外での資料収集などに使用したいと考えている。
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