2020 Fiscal Year Research-status Report
地方小規模映画館の顧客価値創造メカニズムに関する日英比較研究
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20K00243
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
金井 秀介 立命館アジア太平洋大学, 教育開発・学修支援センター, 准教授 (90635492)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地方小規模映画館 / 顧客価値創造 / 映画産業 / 経営戦略 / マーケティング |
Outline of Annual Research Achievements |
データ取得と分析(1):顧客アンケート調査と顧客インタビュー:2020年10月にシネマ5(大分)にて3日間約120人に対して顧客アンケート調査を実施した。顧客アンケートの主要目的は顧客の映画館に対する価値の全体像を把握すること、及びその後の個別の顧客インタビューに繋げることであった。その後、取得情報のデータ化および分析を実施した(2020年10月ー2021年1月)。続いて顧客アンケート調査を受けていただいた人の中で応じていただける人(14名)に個別の顧客インタビューを実施(2020年11月ー12月)およびデータ化を行った(2020年11月ー12月)。また、映画サークルへの取材を実施(2020年12月および2021年1月)し、データ化を行った(2021年2月)。 データ取得と分析(2):映画館経営者へのインタビュー:シネマ5(大分、2020年10月、2021年1月)、桜坂劇場(沖縄、2021年1月)、シネマテークたかさき(群馬、2021年3月)においてそれぞれインタビューを実施。桜坂劇場では浪曲映画イベントの取材も合わせて行った。上記インタビューおよび取材の情報はデータ化した(2020年10月ー2021年3月)。 文献研究:顧客価値(R.Lusch, S.Vergo, C.Gronroos, Woodruff, M.Holbrookなど)、映画産業(C.Moul, S.Greenwald, H.Vogelおよび国内映画産業関係資料など)、アクターネットワーク理論(M.Callonなど)、ケーススタディ研究(K.Eisenhardtなど)、質的研究(D.Gioiaなど) 学会発表:Southwest Conference on Asian Studies(2020年10月)、Asia Pacific Conference(2020年11月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍などの不測の事態に少なからず影響を受けた面は否めないが、この時点で実施可能なことを早期に整理し、ある程度は研究体制を立て直し、マイナスの影響を最小限に止めることができたのではないかというのが全体状況である。 マイナス面:本研究は地方小規模映画館での活動に関するフィールドワークの占める割合が多く、コロナ禍において予定されていたイベントの中止(高崎国際映画祭は2年連続で中止)や取材を断念した部分(札幌のシアターキノ、広島の八丁座、海外での取材など)があるなど影響は小さくない。また、個別の顧客インタビューなどにおいてもコロナ禍の感染防止対応が加わるなどの研究計画当初は予期していなかった業務が加わっている。 プラス面:シネマ5(大分)にて顧客アンケート調査と個別顧客インタビューが実施できたことにより、本研究の中心テーマである顧客価値創造のあり方に新しい知見をもたらした点で進展があった。また、当初より取材している浪曲映画イベントの取材を重ねることで映画館側と顧客側の双方が見出す価値の考察を深めるきっかけとなった。また、顧客へのアンケート調査や個別インタビュー、浪曲映画イベント取材の分析から、その後の映画館経営側への取材にこれまでとは違うアプローチが存在することがわかったことも進展の一つと言える。文献研究では、主に顧客価値研究とリサーチ方法(質的研究)において進展があった。顧客価値研究では時間をかけた文献整理と理解に一定の成果があった。またリサーチ方法では、理論を本研究の手法として使用するための修正を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、国内研究部分については、取材データの分析と考察、追加取材(データ分析と追加取材はある程度交互に繰り返される)から論文執筆という流れを想定している。国内での成果をもとにその後はイギリスでの研究取材を予定しているが、これはコロナの状況をよく見極めて進めていくほかない。 2021年度の研究推進方策としては、まず取得データ(顧客アンケート情報と顧客インタビュー情報)のさらなる分析と統合を進め質的研究上の概念図化を行う。同時に取得データ(映画館経営側)の分析からも概念図化を行い、顧客と映画館の顧客価値創造メカニズムに関する概念図の一体化を目指す(顧客価値創造の全体像)。質的研究の性質上、このデータの分析、統合の段階で顧客側と映画館側の双方に追加情報の取得が必要になることが想定されており、こういった追加情報の取得と分析を交互に重ねていくことになると思われる。また、その他の追加情報としては、地方自治体などから過去および現在の地域社会に関するデータ(例えば過去の映画館周辺の街並みやかつてその街に存在した映画館の写真、それに関するデータなど)を取得したり、場合によっては関係者に簡単な取材の必要が発生することも想定している。 2021年度後半からさらに先の研究については、コロナの状況が大きく左右すると思われる。国内では大分の映画館と大分以外の映画館の関係性を研究フレームワーク内で適切に最適化していくことが求められる可能性がある。また、海外(イギリス)については状況が許せば2022年度後半にもフィールドワークの実施を計画に入れているが、状況を見極めることが重要である。また、これは国内海外ともに同じだが、コロナの影響で映画のあり方(ビジネスモデルや顧客の映画体験など)にも変化が生じてきており、本研究内でこの点を考慮するかどうかの判断はまだ時期尚早であるが、心に留めている。
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Causes of Carryover |
コロナの影響により中止になった取材イベント(高崎国際映画祭)、取材(札幌シアターキノ、広島八丁座など)、とそれに伴う関連費などにより次年度使用額が生じている。 翌年度分と合わせた使用計画については、コロナの状況を見極めながら、可能であれば当該年度に実施できなかったフィールドワークを行なっていくことなどを予定している。
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Research Products
(2 results)