2021 Fiscal Year Research-status Report
地方小規模映画館の顧客価値創造メカニズムに関する日英比較研究
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20K00243
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
金井 秀介 立命館アジア太平洋大学, 教育開発・学修支援センター, 准教授 (90635492)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 映画館経営 / 顧客価値創造 / マーケティング / 経営戦略論 / 小規模ビジネス |
Outline of Annual Research Achievements |
データ取得:(1)Cine Vita(シネマ5):映画「東京裁判」上映関連について映画館経営者に取材を実施。(2)たかさきコミュニティシネマ(シネマテークたかさき):2022年3月に群馬県高崎市にてたかさきコミュニティシネマ主催で3年ぶりに開催された高崎映画祭への取材を実施した。高崎映画祭への正式取材としては初めてとなる。メインイベントである授賞式への参加、プロデューサーへの取材、などを実施。あわせて同コミュニティシネマの別事業であるフィルムコミッションに関して、3年前に制作参加した市民への取材を実行。 データ分析:(1)映画館経営者取材資料に関する質的分析を実行。シネマ5顧客に関するサーベイデータ(テキストマイニング)、および個別インタビューデータ(GTA)の質的分析を実行。(2)テレビ局の映画製作事業に関する分析を実行。 文献研究:国内映画産業とテレビ放送局の映画製作事業に関する関係性(Caves,R., 菅原、山下、山田など)、現象学と顧客価値創造(Lusch,R., Vergo,S., Husserl,E., Foucault,M.)、映画史、特に映画館史(Lipton,L., 田中、谷川、岩本、板倉、加藤など)アクターネットワーク理論(Latour,B., Callon, M.など)、ケーススタディ研究(Eisenhardt,K.など)、質的研究(Gioia, E.)など。 論文:「フジテレビにおける映画製作事業の戦略的視座についてー1995年から2010年にかけてのテレビドラマ製作経営資源の映画製作への展開に関する考察ー」東アジア研究30号(2022年3月) 学会発表:Asia Pacific Conference 2021(2021年12月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全体:コロナ禍の影響により、地方の映画館がイベント活動などプロモーションの縮小を行わざるを得なかったこと、また、研究者本人が出張等の移動や関係者への取材などの制限、自粛によりフィールドスタディがごく限定的な形になったことが、本研究に一定程度の遅れが生じている主因である。必要な時期に必要なデータの取得に困難が生じたことの影響は小さくない。その一方でデータ分析手法や文献研究において、ある特定分野での進捗はあった。 各論:マイナス面:本研究の中心はフィールドスタディにある。コロナ禍において2021年末までは研究者本人の移動や地方映画館の活動が制限された状況にあり、こうした影響は小さくなかった。 各論:プラス面:2022年に入り、コロナの感染状況が改善する中、映画館の各種活動が正常化し始めた。例えば群馬県高崎市において3年ぶりに高崎映画祭が開催され(本研究における主要ケースの一つであるたかさきコミュニティシネマ主催)、現地にてプロデューサーなどに取材調査を実行できたことは明るい兆しになった。地元大分県のシネマ5においては年に1度の映画上映である「東京裁判」を現地にて観察、および映画館主への取材を実行できたことも貴重なデータになった。 また、フィールドスタディが制限される中、映画史、映画館史(特にこの部分)、映画製作事業に関する文献調査と論文執筆に時間をかけたことは研究全体の幅や深みを持たせることにつながったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下を計画している。 データの整理と取得:(1)主要ケースの一つである序破急(八丁座:広島)について追加取材の実施(今年度前半)。特に同映画館の顧客との接点(映画イベント:シネマdeトークなど)の取材機会を想定している。映画館主、マネージャーへの取材も併せて実施したい。(2)同じくシアターキノについての、もしくはオーナーのイベントについても検討。(3)地方自治体(札幌、高崎、広島、大分)の過去の映画館に関するデータの取得。(4)シネマ5顧客への追加取材の可能性。(5)主要4ケースに関する映画館構造データ(フロアプランなど)と上映映画、財務データの整理に伴うデータの追加取得の可能性。(5)映画産業、国内映画館に関するデータ取得の可能性。 データ分析:(1)主要4ケースに関するネット上の顧客コメントのテキストマイニング分析、(2)シネマ5顧客に関するサーベイデータのテキストマイニング分析、(3)シネマ5顧客への個別インタビューの質的分析(GTA)、(4)主要4ケースの映画館オーナー、およびマネージャーのインタビューの質的分析(GTA) 論文執筆作業:(1)主要4ケースの顧客創造メカニズムに関するケーススタディ(Eisenhardt,K.)の執筆、並行して(2)Cine Vita(シネマ5)の顧客創造メカニズムに関するGTAによる分析の執筆、および(3)方法論の執筆、(4)全体考察の執筆は上記データ取得と分析、執筆の進捗によって変わってくることが予想される。 学会参加:メディア学会(6月) 学会発表:文化経済学会(7月)「テレビ局の映画製作戦略」、アジア太平洋カンファレンス(12月)「地方小規模映画館の顧客価値創造メカニズム」
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Causes of Carryover |
コロナ禍において、特に2021年末までは研究者本人の移動制限と取材対象先である映画館のイベント自粛などにより本研究において必須であるフィールドスタディーの制限が大きく、研究活動を文献研究などを中心に変更したことによる影響。 使用計画としては、まずコロナの社会生活及び研究活動への影響が下がってきたことによりフィールドワークや研究会活動などが比較的以前に近い形で進められそうであることが挙げられる。次に研究の進展により、研究データ収集の成果から研究分析の質や規模などが明確になってきている。今後は必要に応じて分析ソフトやデータの加工など研究分析活動にも焦点を置いて進めていく。
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Research Products
(2 results)