2021 Fiscal Year Research-status Report
ショパン作品の演奏におけるヴァリアントの選択と即興的表現の研究
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20K00244
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
多田 純一 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 客員研究員 (90635278)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ショパン / ショパン国際ピアノ・コンクール / 演奏表現 / ヴァリアント / 即興性 / ショパン受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の2年目にあたる当該年度は、当初は初年度に行うことを予定していた調査および研究発表を実施した。新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)により、2020年10月開催予定であった第18回ショパン国際ピアノ・コンクールは2021年10月に、2020年12月開催予定であった国際ショパン・コングレスは2021年5月に延期、その後、更に同年12月に延期となったが、いずれも延期された日程にて現地開催され、調査および研究発表を実施することができた。 第18回ショパン国際ピアノ・コンクールにおける現地調査を実施するにあたり、本研究の初年度に発表した論文「ショパンの作品におけるヴァリアントの選択-《バラード》の場合-」多田純一、岡部玲子、武田幸子、奈良佐保短期大学『研究紀要』第28号、pp.1-16に基づき、《バラード》全4曲について、どのような箇所でヴァリアントの選択が行われるのかを考察するためのチェックシートを作成した。このチェックシートを用いて、研究代表者である多田と研究協力者である岡部が現地調査を実施した。その調査結果については、論文としてまとめ、最終年度に発表する予定である。 2021年国際ショパン・コングレスでは、研究代表者である多田が ‘Musical Activities of the First Japanese ‘Chopin Pianist’ Ryukichi Sawada (1886-1936): Focusing on Chouwa-gaku (Harmonized Music)’、研究協力者である武田が‘The Acquisition of a 19th-Century Manuscript to Japan: Stichvorlage Copy of Mazurka C major Op. 33 No. 2’について、英語で口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始時の研究の概要のうち、「1.第18回ショパン国際ピアノ・コンクールにおける参加者の演奏表現について、ヴァリアントの選択および即興的演奏の有無を分析する。また、参加者へのインタビューを実施し、演奏表現とエディション選択の関連性を考察する」、「2.国際ショパン・コングレスに参加し、コンクールにおける演奏表現について研究者間の意見交換を行い、報告する」の2つの項目については、いずれも現地開催され、調査および研究発表を行ったことにより、予定よりも1年遅れてはいるが、概ね順調に進んでいる。コンクール参加者へのインタビューについては、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)への対策への観点から実施を控えた。 その一方で「3.コンクール参加者が使用したエディションの一覧資料を入手し、第1回ピリオド楽器ショパン・コンクール参加者が使用したエディションとの比較考察を行う」については難航している。コンクール前からポーランド国立フリデリク・ショパン研究所のコンクール担当者とメールにて連絡を取り、コンクール会場にて面会し、あらためてコンクール参加者が使用したエディションのデータを提供していただく約束までは取り付けた。しかしながらデータ量が多いため、コンクール後に数回に分けて送られてきており、現時点ではまだすべてのデータが揃っていない。新型コロナウイルス感染症への対策およびウクライナ難民受け入れなどの諸事情が重なっていることにより、通常よりも時間を要していると考えられる。約半数のデータは入手しているため、次年度に入手作業を持ち越し、データが揃い次第、比較考察した論文を発表する予定である。 「4.コンクール後に行われる演奏会において、ピリオド楽器奏者の演奏とモダン楽器奏者の演奏の相違点を再考し、コンクールの影響を考察する」については、最終年度の課題とする方向でその方法論を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で述べた通り、研究開始時の研究の概要1については、事前に作成したチェックシートに用いて現地調査を実施したため、その調査結果としてヴァリアントの選択について考察し、論文として発表する。 概要2については、コングレスにて発表した原稿をショパン研究所指定のガイドラインに基づいて論文として体裁を整え、2名の発表者はすでに原稿を提出している。しかしながら、論文集としての出版時期は明らかにされていないことに加えて、2010年に行われたコングレスの論文集が2017年に出版されていることから、出版までには数年かかると予想される。 概要3については、第1回ピリオド楽器ショパン・コンクール参加者が使用したエディションのデータは全データを入手済みであるが、第18回ショパン国際ピアノ・コンクール参加者のデータは揃っていない。この2つのコンクールにおけるエディションの使用を比較するため、すべてのデータが揃い次第、論文として発表する。 概要4については、考察内容を変更する可能性がある。その理由として第18回ショパン国際ピアノ・コンクールでは即興演奏が行われなかったことが挙げられる。この時点で、ショパン国際ピアノ・コンクール参加者とピリオド楽器ショパン・コンクール参加者の演奏に対する考え方が違ってることが明らかになった。しかしながら、これまでのショパン・コンクールでは演奏されなかった作品の選曲や、ある作品を他の作品の前奏曲のように位置付けるというプログラミングは見られたため、最終年度に考察が可能な方法を模索する。 新型コロナウイルスの影響により研究が大幅に制限されているため、明治期から昭和初期におけるショパンの作品の演奏や、ショパンの作品を積極的に演奏したピアニストの音楽活動に関する研究を充実させ、当初の予定から実施不可能となった部分を補う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により初年度の予定が大きく変更され、今年度に繰り越したが、今年度の予算は概ね予定通りに使用された。次年度使用額については、行動が大きく制限された国内における旅費を使用しなかったことに起因している。 繰り越される次年度使用額は、応募時よりも高騰している航空券(成田ーワルシャワ)やホテル代の差額にあてられる予定であり、当初の予定通りに使用される。
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Research Products
(9 results)