2020 Fiscal Year Research-status Report
Polyester Resin to Create Skin Texture in Solid Modeling-Mixing Oil Paint as Color-
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20K00246
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小野 裕子 筑波大学, 芸術系, 助教 (40441365)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 不飽和ポリエステル樹脂 / 立体造形 / 油絵具 / 着色 / ミクスト・メディア / 現代アート |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は不飽和ポリエステル樹脂素材に生きているような立体造形を作り出すため、独自の着色剤として不飽和ポリエステル樹脂に油絵具を混合させて芸術作品として展開している。油絵具の着色剤がもたらす効果は、透明感を持たせた現実的な肌質が得られ、申請者が想像する人体や動物等の肌理の特徴を表現できると考える。工業用の樹脂専用着色トナーは発色が良く、申請者が理想とする視覚効果が得られない。本研究では、不飽和ポリエステル樹脂と油絵具が混合可能な素材であることを明らかとするため、実験と調査、実践を行っている。本研究の課題である不飽和ポリエステル樹脂と油絵具が混合可能な素材であることを明らかにするには、油絵具と樹脂専用着色トナーの組成を比較した。そして、申請者によるこれまでの実験では、混合できる油絵具と分離して混合できない油絵具とに分かれていた。このため、不飽和ポリエステル樹脂と油絵具の混合適正を調査し、樹脂専用着色トナーより油絵具による着色が肌の質感を表現するのに適していることを明らかにした。「内部着色」の着色剤 としての効果と樹脂と油絵具の混合適正が解決していないことを明らかとした。 この成果の意義として、現代アートで一般化された1970年以降のミクスト・メディアにおける新たな異種素材の立体造形を獲得出来ると考える。素材教育や造形論、論文や学会等で発表し、ワークショップや展覧会を通じて社会へ還元していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度、2021年度として、事例調査、先行研究、先行作家を元に資料収集と取材をメインの計画とした。国内調査として、東京造形会社アレグロと大阪ホルベイン工業株式会社、美術館取材、海外調査として、イギリス サーチギャラリー、アメリカ シカゴアート&サイエンス造形工房の現地調査、およびに彩色についての情報収集を考えていた。しかしながら、新型コロナウィルス感染拡大のため、国内およびに海外への出張は自粛をしているため、資料収集が遅れている。これまでの書籍やインターネットの資料による情報はまとめていることが出来ている。 情報収集以外には、不飽和ポリエステル樹脂と油絵具が混合可能な素材であることを明らかとするため、混合実験と制作研究を行っている。混合実験の準備知識のため、油絵具の組成について調べ、その特性を考察の元とした。油絵具の成分と顔料の粒子について不飽和ポリエステル樹脂にうまく分散されない原因を検討した。 これまでの制作研究で油絵具が分散されないという問題があり、本論の柱となる課題を解消するため、大きく分けて3つの方法で混合実験を行った。1.)油絵具の強い凝集力の働きを観察し、混合方法の検討をした。ペンシルミキサーの利用。2.)物理的な要因を検討し、練り棒を使って圧力を加えた。3.)乾性油変性アルキド樹脂を助剤とした。不飽和ポリエステル樹脂に均一に分散されて着色された。 今後の可能性として、関係する混合の技法資料には、油絵具ないしは顔料と不飽和ポリエステル樹脂との混合が推奨されていない。本実験において、ほぼ適正であることを確かめられ、汎用的に利用できると考える。幅広い色数の油絵具と不飽和ポリエステル樹脂の混合によって、申請者による肌理の表現以外にも様々な展開の可能性があると考える。混合実験によって気づいた表現の幅、表面の表情、混合後の表現の可能性を考察している。
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Strategy for Future Research Activity |
立体造形の表現要素として、着色について焦点を定め、本研究の混合の実験によって、これまでの申請者の課題であった不飽和ポリエステル樹脂と油絵具の混合の適性を明らかとした。申請者にとって不飽和ポリエステル樹脂の素材は、他の素材と比べると扱いやすい。着色は鏡面仕上げから、テクスチャーを付けた表現等、幅広い表現が出来るからである。更に研磨によって曲面を作り易く、視覚的には透過性があり、生き物の肌理を着色によって表現出来る。工業用の樹脂用着色剤は、申請者が想像する理想的な肌理の視覚効果が得られなかった。油絵具は色相と明度の幅があり、色の調整が出来、理想的な肌理の表現が得られるのだと考える。そして、光の透過性が高い絵具であれば、申請者が利用しているグレーズ技法が応用出来、透明感のある肌理を作り出せることが可能であることを明らかとしている。今後の可能性として、関係する混合の技法資料には油絵具と不飽和ポリエステル樹脂との混合は推奨されていないが本実験において、ほぼ適正であることを確かめられたので汎用的に利用していく。 今後の課題としては、本研究にて全ての油絵具が不飽和ポリエステル樹脂と混合出来ると断定出来ていないことである。混合出来なかった油絵具の成分内容の調査を進め、混合出来るように助剤の種類を増やす等、検討していく。色の種類を増やすことで樹脂を素材とした立体造形表現の幅を作り出すことが可能となる。 また、素材の環境意識の観点について、広く一般的に変化している。樹脂やゴムによる特殊素材の使い易さや素材の開発は発展を遂げてきた一方で、人体に有害であることが認められる。環境に配慮された素材を模索することや作品に与える効果も考慮していきたい。 新型コロナウィルス感染拡大が収束した場合、国内調査と海外調査を実行したい。
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Causes of Carryover |
2020年度、2021年度として、事例調査、先行研究、先行作家を元に資料収集と取材をメインの計画とした。国内調査として、東京造形会社アレグロと大阪ホルベイン工業株式会社、美術館取材、海外調査として、イギリス サーチギャラリー、アメリカ シカゴアート&サイエンス造形工房の現地調査、およびに彩色についての情報収集を考えていた。しかしながら、新型コロナウィルス感染拡大のため、国内およびに海外への出張は自粛をしているため、出張費を使用しなかった。このために次年度使用額が生じた。
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Remarks |
2020年度から2024年まで「ポリエステル樹脂製立体造形表現による肌の質感研究 ー油絵具を着色剤としてー」を題材とした本研究のためのホームページ
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