2023 Fiscal Year Annual Research Report
ミュージアムにおける聴覚体験デザインの実践的方法論の研究
Project/Area Number |
20K00248
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺田 鮎美 東京大学, 総合研究博物館, 特任准教授 (50466869)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ミュージアム / 博物館 / 文化政策 / 聴覚体験 / マルチセンサリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「ミュージアムと音」の問題を取り上げ、来館者の聴覚を通じた新たなミュージアム体験をいかにデザインすることができるのか、その実践的方法論を探究することを目的としてきた。最終年度は、前年度に引き続き、国内外の博物館(福岡市美術館、山口情報芸術センター、静岡県立美術館、京都国立近代美術館、エクスプロラトリウム(米国)、サンフランシスコ近代美術館(米国))での音を用いた展示の事例調査を中心に取り組んだ。これにより、ミュージアムにおける聴覚体験デザインの実践的方法論の構築に向け、各事例の特徴と課題を分析し、同方法論の構築につながる要素の抽出を試みた。調査事例からは、従来、音の展示での利用は、何かの補足としての情報提供等の副次的な活用に留まるケースが主流であったのに対し、音そのものを主たる展示コンテンツとして、来館者の聴覚にはたらきかけるさまざまな工夫が捉えられた。特に、山口情報芸術センターやエクスプロラトリウムでは、メディアアーティストとキュレーターの協働により、アートとテクノロジーを架橋し、必ずしもアート作品ではないミュージアム展示コンテンツが制作されており、考察の結果、このような協働がミュージアムにおける聴覚体験デザインの重要な要素の一つとして導き出された。また、音を用いた展示は、視覚障害者のアクセシビリティを高める効果があるとともに、それ以外の人々にも、聴覚を通じて得られる情報や感覚により、新たなミュージアム体験をもたらしていると考えられた。本研究では、聴覚体験の可能性に着目してきたが、事例調査を進める中で、特にデジタルメディア等の展示技術を用いて、複数の感性を刺激する工夫を行っている注目すべき事例があることがわかった。それについては、本研究を発展させ、ミュージアムにおけるマルチセンサリー体験デザインの研究というテーマとして、今後、考察・分析していきたいと考える。
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