2021 Fiscal Year Research-status Report
Studies of Tourist Sites as Places to Experience Music in Japan
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20K00249
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
葛西 周 早稲田大学, 高等研究所, 講師(任期付) (00584161)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大衆演劇 / 旅芝居 / オーディエンス論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も新型コロナウイルス感染症流行の影響が続いたため、フィールドワークの実施計画を変更して、石川県和倉温泉・加賀屋専属の雪月花歌劇団による過去の公演の記録映像の収集および分析をおこない、並行してコロナ禍で活発化した、温泉地で活動するポリネシアン・レビューや大衆演劇の団体等による動画配信の調査を進めた。10月には「早稲田文化芸術週間2021」において、「温泉音楽学入門:旅先のエンタテイナーたち」と題し、温泉地で活躍するパフォーマーを招聘した実演付きの鼎談イベントを企画・運営した。ゲストとして、上記の少女歌劇・雪月花歌劇団でトップ男役を務める鞍馬みしろ氏と、各地の温泉を巡演する大衆演劇・橘菊太郎劇団座長の橘大五郎氏に出演いただいた。少女歌劇と大衆演劇はいずれも温泉地で発展してきた芸能だが、各々上演会場や形式がある程度固定されており、パフォーマーの共演機会は稀である。今回の鼎談で、パフォーマーのライフコースやルーティーン、異性を演じる際のスタンスやテクニックといったトピックについてそれぞれから同時に伺うことで、これまで見えてこなかったジャンル間の類似性や差異がより鮮明になり、本課題の仮説を裏付けるような有益な質的データが得られるとともに、現段階での研究成果の一部を一般公開イベントおよびそのアーカイヴ配信で広く共有する機会となった。 また、従来の聴取/オーディエンス論を批判的に継承しつつ、温泉地というパフォーマンスの場の特性、そこでのパフォーマンスの内容や形式、聴衆の聴取態度のあいだの相互作用について検討した論考「旅するオーディエンス:温泉地の聴取環境考」が、細川周平編『音と耳から考える:歴史・身体・テクノロジー』(アルテスパブリッシング、2021年10月)に収録された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた首都圏外での温泉地でのフィールドワークは、当該年度も新型コロナウイルス感染症流行の影響で実現できなかったが、移動規制の緩和に伴い、川越や永山など、近郊の温浴施設の舞台での大衆演劇公演の調査を実施できた。加えて、前述の鼎談イベントやその準備過程を契機として、パフォーマーへのインタビューの機会も得られている。本課題の成果の寄稿・刊行も進められており、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本来初年度のフィールドワーク対象としていた雪月花歌劇団の和倉温泉での公演は、新型コロナウイルス感染症対策の観点から依然として休演中であるため、都道府県をまたぐ移動についてのガイドラインに則りつつ、福島県いわき湯本温泉のポリネシアン・レビューや山口県湯田温泉のバラエティ・ショー、群馬県草津温泉の郷土芸能ショー等、その他に予定していた調査地へのフィールドワークに着手する。 また、パフォーマーとの対話の機会になるようなイベントの企画にも、引き続き取り組みたい。前述の鼎談イベントへの反応から、本課題が一般に関心の高いテーマであることを再確認できたため、本課題のために収集した各温泉地のパフォーマンスに関する情報を、予備知識のない読者にもわかりやすいような形で紹介するプラットフォームの構築を企図している。 さらに、本研究の総括として、音楽ツーリズム研究の方法論に関する論考の発表を予定している。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響でフィールドワークが再度中止になり、国際学会も延期ないしオンライン開催となったことで、当該年度の予算に占める比重の大きい旅費を繰り越す必要が生じた。2022年度はフィールドワークを開始できる見込みであり、国際学会への対面参加も予定されているため、繰越分はその旅費として活用する。
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Research Products
(2 results)