2023 Fiscal Year Annual Research Report
Socially Engaged Art Project and Art Education in a Village of Nepal
Project/Area Number |
20K00256
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
金田 卓也 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (90265562)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アートプロジェクト / 自然素材 / 持続可能な発展 / ネパール |
Outline of Annual Research Achievements |
当初予定していた現地調査は新型コロナウィルス感染拡大のために断念せざるを得なかったが、感染収束後、研究調査期間を延長し2023年4月にネパールのヒマラヤ山麓にあるムラバリ村において現地調査を行い自然素材を活用したアートプロジェクトの進捗状況を確認することができた。コロナ禍の中も現地コーディネイターの協力のもとにアートプロジェクトを継続し、自生している竹を構造体とした集会所の建設、ランドアートとしてのアボカド植樹、天然の土による壁画などさまざまな活動が実践された。村人たちもそうしたアート活動を持続可能な村の発展に結びつける可能性について経験的に理解できているように思われた。芸術教育という視点からも村の子どもたちも壁画や自然素材を使った造形的な活動への関心に対する強い関心が見られ、村の学校の教員もアートを通して子どもたちの創造性を伸ばすという教育的意義を理解できるようになり、こうした活動を継続的に行うことを望んでいることがわかった。これまでのアートプロジェクトを総括し、村全体をアートビレッジとして活性化していくという計画も進められている。 本研究は、美術館やギャラリーもない、アートという概念さえ存在しない地域で自然や暮らしに根差したアート本来の姿を再生する試みでもある。2023年秋には古河街角美術館において「境界を超えるアート」という企画展の一環としてアートプロジェクトの一部を紹介する写真と共にムラバリ村で製作された伝統的金属工芸技術を生かしたコインや村の女性たちによるウコン染めの布などを展示した。ネパールの村のアートプロジェクトを地方の美術館とつなぐことで生活に根差したアートの意義を再認識できる貴重な機会となった。持続可能な村落開発につながる「社会関与型アート」プロジェクトのモデルを提示するという本研究の目的は十分に達成できたといえる。
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