2023 Fiscal Year Research-status Report
ソヴィエト音楽生活の新たなコンテクスト化に向けて:ソヴィエト・オペラの暗黙知研究
Project/Area Number |
20K00257
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Research Institution | Kunitachi College of Music |
Principal Investigator |
中田 朱美 国立音楽大学, 音楽学部, 准教授 (10466964)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ソヴィエト・オペラ / 歌劇場 / 暗黙知 / ソヴィエト音 / ソ連 / 文化政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の研究実績は主として、8月と3月に各約1週間行ったサンクト・ペテルブルグでの資料調査と論文投稿の2件である。 資料調査の目的は、引きつづき、ソ連時代のオペラ上演状況調査の一環としてレニングラードの国立歌劇場の上演状況を調査することであった。昨年度の調査ではレニングラードのミハイロフスキー劇場(旧マールイ・オペラ劇場)の上演状況のおよそ7割についてこの機関が所蔵する上演記録目録カードなどから調査できたため、2023年度はほかの一次資料からこの残り3割を充填する作業に取り組んだ。主たる調査対象は1910~1930年代の新聞・週刊誌である。現在、この時期の関係資料の一部がPDFでウェブ公開されているが、全体を見渡すには程遠い状況にある。そこで、ロシア国立図書館に諸分館にてこの時期に刊行されていた定期刊行物数種を現物やマイクロフィッシュで確認して回った。現地で撮影した画像資料を帰国後に入力する形で内容を確認しつつ、データベースを作成中である。 2件目の論文は、上記データベース化の作業をほぼ完了させたボリショイ劇場のデータから、ソ連音楽史における重大な転機の一つとなった1935~1936年シーズンの全公演(外からの客演公演も含む)を掲載し、この転機に絡む3つの現象が畳みかけるように起きていたことを指摘した英語論文である。この3つの現象とは、いわゆる「プラウダ批判」、ジェルジンスキーのオペラ《静かなドン》の特異な称揚、そしてこの後1960年まで続いた「デカーダ(国民芸術旬間)」フェスティバルの創設である。この時期の公演一覧からは、これらが同時期に実施され、いずれもソヴィエト・オペラ制作に関わるソヴィエト体制化の一局面であったことが浮かび上がった。ボリショイ劇場はまさに体制変化を伝える場であり、当時の言説だけでなくこうした上演状況の様相を例証する必要性が改めて確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
covid-19と情勢悪化に伴い、2020年度から予定していた現地調査がようやく2022年度末から実現したこと、現地でもマリインスキー劇場からは調査依頼への返答がないなど調査の進捗にも影響があることが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業の期間延長を申請して調査を継続する。引きつづき、収集済情報を精査、データ化するとともに、次回の資料調査を計画する。引き続き、ミハイロフスキー劇場の1910~30年代の上演状況の穴を充填していくとともに、新たにマリインスキー劇場の上演状況についても調査を進める。
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Causes of Carryover |
上述のとおり、2020~2021年夏にかけてcovid-19と情勢不安で現地調査ができなかったため。「補助事業期間延長申請書」を提出し、引きつづき2025年度も継続する予定である。
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Research Products
(1 results)