2021 Fiscal Year Research-status Report
古代粒金技法の接合材を複製制作実験より解明する-起源の復古と展開-
Project/Area Number |
20K00261
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Research Institution | Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
成井 美穂 文化学園大学, 造形学部, 准教授 (70459957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相原 健作 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (50376894)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 粒金 / 金 / 接合 / 鉱石 / 文化財 / クリソコラ / 孔雀石 |
Outline of Annual Research Achievements |
古代粒金作品は現存するが、技法は途絶え現代に継承されていない。その中で「古代粒金作品は銅化合物で接合されている」という定説に基づき、科学者たち は粒金作品分析時に「銅の検出」の有無をポイントとしている。これは古代粒金技法発祥当時の文献に「クリソコラ」や「孔雀石」を 接合に用いたなどの記述 に由来する。本研究では、クリソコラや孔雀石に含まれるAl,Siなどの微少元素に着目し、実際に鉱物での粒金接合が可能かを熟練した金工作家が接合実験を行う。その接合部を接合の研究者がSEM-EDSで評価し、鉱物のCu,Al,Siなどが、どの様に母材の金に拡散するかを検討する。その粒金の再現実験を通じて制作施工方法を確立する。 令和3年度には、日本画の画材である顔料に使用する鉱物を入手し、粉砕した粉を使用して粒金接合の再現実験を実施し最適条件を検討した。 国内外から材料を入手している7種類の鉱物の粉砕した顔料の組成分析を行った。その顔料を用いてろう材となる接合ペーストを作成し、粒金の接合実験を都市ガスバーナーを用いて行った。カーボンブロックの上に接合試料を置き還元炎で加熱し還元雰囲気中での接合実験を行った。 また、それらの顔料で作成したろう材のぬれ広がりおよび凝集状態を調査した。純銀板上に接合ペーストを塗ったものを電気炉中で700℃、750℃、800℃、850℃、900℃、950℃で10min保持で加熱処理した結果、目視観察からは加熱温度850℃がろう付けには適切と判断された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和3年以前では、新型コロナウイルス感染症の影響により海外渡航ができず古代粒金技法発祥の地であるトルコ付近のクリソコラを入手できず研究計画通りに進展しなかったが、令和3年は、国内で日本画顔料の材料とされる海外の鉱物を入手した。それらの鉱物を粉砕した粉を使用して古代粒金接合の再現実験を実施し、良好な接合が目視観察で確認できた。研究分担者と連携し、接合に使用した鉱石の組成分析をし、ろう材について接合雰囲気を変えるなどの再現実験をしているが、まだ最適な接合条件の検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、今までに金粒(Au)と基板(Au)を鉱物のろう材を用いて接合した接合部をX線CTで撮影し、X線透過像でフィレットなど、ろう材の濡れ広がり具合を観察して比較検討し評価する。その試料の接合強度をボールシェアテストで計測し、接合が強固だった鉱物については、金属接合の研究者がSEM-EDS分析などで評価を行う。鉱物に含まれる微量元素について検討を重ねる。特にCuは勿論だが、まだ誰も注目していないAl,Siなどの微少に含まれる元素に着目し、それらの元素がどのように母材に拡散するかを、金工作家、金属文化財研究者などの芸術学視点と、ろう接の研究者の科学的視点により検討し、実践的な研究を進める。先ずは、ろう材組成と添加物の効能について調査し、ろう材の融点やろう付け雰囲気を変えて再現実験を行う。その接合実験条件と接合強度の関係性や、安定した接合と美観などの検討を連携して行い粒金接合の最適な条件を確立していく。 また鉱物をペースト状にするために現代ではトラガカントゴムを使用しているが、日本画でも顔料だけでは和紙への接着が弱いので、顔料に膠などのバインダーを用いる。その膠の成分などにも着目して、ろう材に使用する鉱物以外のバインダーについても調査し実験していきたい。 新型コロナウイルス感染症の影響が少なくなってきたので、古代粒金接合発祥の地と考えられるトルコ付近の鉱物の入手や、国内美術館と連携して古代粒金作品の観察や組成分析などの非破壊調査を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で国内美術館に古代粒金作品の調査に分析機器を搬入して実施する予定であったが実施できなかった。現在は規制が緩和されてきたため準備を進めているので令和4年度旅費を使用する予定である。海外渡航なども緩和されてきているため、海外採取の鉱物の入手についても検討しているため、物品費に使う。
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