2020 Fiscal Year Research-status Report
New Vistas in Period-Drama Research: Researching Tangible and Intangible Resources on the Toei Kyoto Film Studio
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20K00265
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
石川 肇 国際日本文化研究センター, インスティテューショナル・リサーチ室, 助教 (80596734)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 時代劇 / 衣裳 / 殺陣 / 旗本退屈男 / 魔界転生 / 清水次郎長 / 緋牡丹博徒 / 緒形拳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、東映京都撮影所で作成された時代劇における代表的作品の未整理「衣裳」を調査整理し、撮影記憶すること。それと同時に、新国劇、東映京都、松竹京都の撮影所に伝わる型の基本型を殺陣師に演じてもらい撮影記憶し、理論や型を比較調査することである。2020年度は3年計画の1年目で、フィールド調査型の本研究にとって新型コロナウィルスの影響は撮影所への出入りに制限がかかるなど深刻で、想定していた調査回数を大幅に減らすことになった。しかしながらその少ない回数中、①「退屈旗本男」(歌舞伎衣装)、②「魔界転生」(天草四郎時貞衣裳、ガラシャ衣裳)、③「清水次郎長」(次郎長衣裳3点)、④「緋牡丹博徒」(お竜衣裳4点)を発見、撮影することができた。「旗本退屈男」と「清水次郎長」の衣裳デザインは、あやしい絵展などで近年評価が高まってきた日本画家の甲斐荘楠音のもので、「魔界転生」の衣裳デザインは、人形作家として名高い辻村寿三郎のものである。殺陣の調査研究に関しては、①新国劇の伝承者である儀式作法研究家の岩上力および劇団若獅子の笠原章に、新国劇出身の俳優緒形拳も毎日かかさず行っていた「新国劇十の型」を実演していただき撮影した。それは横浜市歴史博物館における企画展「俳優 緒形拳とその時代」で放映され、岩上力に行ったインタビューをもとにして書いた論考「岩上力が語る、新国劇の殺陣と緒形拳」は、企画展記念冊子「戦後大衆文化史の軌跡-緒形拳とその時代-」に収録された。さらには東映京都撮影所の殺陣師である菅原俊夫へのインタビュー撮影も行った。岩上力と菅原敏夫のインタビューは、論考「時代劇は京都文化であり日本文化 ―フィールド調査型の時代劇研究が構築するテクスチャー」中の画像として用い、国際日本文化研究センターのデジタル広報誌「NICHIBUNKEN NEWSLETTER」において日英二言語で配信している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フィールド調査型の本研究にとって新型コロナウィルスの影響は大きく、たとえば「魔界転生」衣裳につき、デザインを担当した人形作家辻村寿三郎にインタビュー調査を行い、「デザイナーならではの知見と想いをデータとして残す」という計画は諦めざるを得なかった。また撮影所への出入りに制限がかかってしまい、調査回数を大幅に減らすこととなった。しかし、その制限の中、当初計画の想定を上回る発見があり、最終年度となる2023年度に発見衣装を用いた美術展覧会の開催(二ヶ所)が決定した。さらに殺陣に関する調査研究も順調で、撮影した動画が博物館の企画展で放映され、インタビューをもとにした論考が企画展の冊子に掲載されるなど、その研究成果を効果的に社会に還元することができた。そして科研費に関する論考「時代劇は京都文化であり日本文化 ―フィールド調査型の時代劇研究が構築するテクスチャー」を書き、国際日本文化研究センターのデジタル広報誌「NICHIBUNKEN NEWSLETTER」に掲載することができた。コロナ期間中における発信として最適だったと考える。そして端的に言えば、当初計画よりもその発見内容や発信における成果が大きく、博物館や美術館における展示や展覧会に係ることができる研究は極めて稀なことも考慮し、自己点検評価を高く設定することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる2021年度は、撮影所における衣裳調査および殺陣の調査を引き続き行うとともに、昨年度計画でできなかった書籍類のある倉庫(今は図書室)の調査を行う。コロナが収まれば辻村寿三郎へのインタビューも行う。衣裳調査においては、撮影所の衣裳担当(引退なされた1名と現職1名)へのインタビューも行う。そして2023年の美術展覧会の準備も進め、それに関する文章も作る。殺陣の調査においては、東映以外の殺陣がどのように伝授されていたかの調査をすすめ、東映の若手俳優に依頼して作成したモーションキャプチャーにアニメを付け、発信できる形に整える。
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Causes of Carryover |
本研究はフィールド調査型のもので、撮影所内に入っての調査・撮影および関係者へのインタビューを複数回行う計画を立てており、その調査費用として交通費や謝金を用意していた。しかし新型コロナウィルスの影響でそれが思うようにいかなかった。次年度ではその分の調査・撮影および関係者へのインタビューを行う予定でいる。
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