2020 Fiscal Year Research-status Report
Environmental Adaptation and Living Science in Colonies and Occupied Lands: Focusing on Kyoto Imperial University Toda Hygiene Classroom
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20K00271
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
中川 恵子 (末永恵子) 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (10315658)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生活科学 / 植民地 / 占領地 / 京都帝国大学 / 戸田正三 / 衛生学 |
Outline of Annual Research Achievements |
帝国日本の膨張と不即不離に結ばれていた生活科学の歴史を掘り起こし、その成立と展開の軌跡を跡づけながら、植民地支配や戦争との関係を明らかにすることを目的とする。この目的を実現するために、具体的には生活科学研究の第一人者・戸田正三(京都帝国大学医学部衛生学教授で興亜民族生活科学研究所所長を兼任)とその一門の活動を政策への関与も含めて分析し、歴史的・社会的文脈に位置づける作業を行っている。 本年は、戸田正三と関連が深く、彼の弟子が衛生学教室の教授を務めていた満洲医科大学に関する資料を編纂し、解説をつけて刊行することができた。 また、本年は戸田正三の学問形成に影響をもたらしたヨーロッパ留学について資料を掘り起こし、分析を進めた。 戸田はドイツ留学中に第一次世界大戦に遭遇し、イギリスに逃れてしばらくロンドン大学で学んだ後、さらにフランスへ行き、パリのドワイヤン研究所で衛生学研究をつづけた。 戸田の研究に助力をあたえたパスツール研究所やドワイヤン研究所の性格についても分析を進めた。ドワイヤンが迫撃砲の開発をしたこと、負傷兵の救護システムの提唱など、軍事に深く関与していたことがわかった。戸田の研究テーマである水の浄化についても、実際に軍事応用された形跡がある。第一次背下記大戦期のフランスでの医学研究が、帰国後の戸田の占領地・植民地の衛生研究を考える上で大事な要素であるといえるであろう。 「防疫給水」は、軍の衛生において重要な要素である。だが、防疫については、研究史では細菌学との関係で重視されたが、これまで給水のほうは比較的手薄であった。こうした給水に関係する水の浄化について、注目すべき事項であると考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新資料を発掘することができ、新しい事実が判明したから。
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Strategy for Future Research Activity |
新資料が発掘されたので、今後それを読み進め、分析をすすめてゆきたい。
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Causes of Carryover |
予定していた出張調査や学会に行くことができず、次年度使用額が生じた。
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