2020 Fiscal Year Research-status Report
The modern history of psychiatry in Taiwan: under Japanese rule and after WWII
Project/Area Number |
20K00272
|
Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
橋本 明 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (40208442)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 精神医療史 / 台湾 / 植民地医学 / 精神医学史 / 養神院 / 社会事業史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、日本統治下台湾の精神医療史に関する基礎的なデータの収集作業として、雑誌『社会事業の友』(1942年4月・第161号から『厚生事業の友』と改題)の1928年の初刊から1943年の終刊に至るまでの全号を通覧し、台湾総督府および台湾社会事業協会で議論されていた精神病者問題の変遷を年代ごとに整理した。また、『植民地社会事業関係資料集《台湾編》』(全51巻、近現代資料刊行会・復刻版)を通覧し、台湾の各州・各市の社会事業要覧や衛生関係資料、写真資料のうち精神病関係および他の衛生問題(ハンセン病、結核など)の記事を拾いあげ、年代・地域ごとに整理した。 上述の基礎的なデータをもとに、1934年に開院した台湾総督府精神病院・養神院の成立とその後の経緯についてまとめる作業を開始した。その際には、台湾の国史館台湾文献館(https://www.th.gov.tw/new_site/01archives/01file_archives/)および中央研究院台湾史研究所(https://archives.ith.sinica.edu.tw/)が web 上で公開しているデータベースにもアクセスし、病院設置の必要性、法制度の整備、土地買収、建物の設計図や人事・履歴に関わる公文書などの一次的な資料の収集につとめた。さらに、より正確な記述を比較検討するために、法制度の施行や人事については、台湾総督府の『府報』、『職員録』、当時の台湾の紳士録などの冊子、養神院スタッフとのつながりが深かった九州帝国大学医学部の記念誌、関係者の自伝・回想録、なども参照した。 こうした基礎的なデータの収集・整理作業は、海外渡航ができずに国内にとどまらざるを得なかったという事情も反映しているが、今後予定している台湾での現地調査の前提となる極めて重要なステップになったと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は新型コロナの影響で海外渡航ができず、予定していた台湾での資料収集が不可能となり、研究の進展は大幅に遅れると見込んでいた。しかし、渡航費用を大量の資料収集に充当することになり、その資料の閲覧と分析に時間を割くことができたために、逆に研究基盤を強化することにつながった。したがって、研究全体を視野に入れた時、今年度の国内研究は必要なプロセスであったといえ、その意味で研究の進捗状況は「おおむね順調」である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究成果としては、日本統治下台湾の文献資料を相当量収集し、それをある程度は分析できたことである。今後は文献だけでは把握できない戦前台湾の状況に関する調査(旧跡の訪問や聞き取りが考えられる)、および戦後台湾の精神医療史に関する文献的・フィールドワーク的データの収集に焦点が移る。このためには現地調査を予定している。しかし、海外渡航の再開時期が不透明であるので、たとえ遠隔であってもデータ収集が最大限可能となり、研究成果を出せる方策を考え、実行していきたい。
|
Causes of Carryover |
おもには新型コロナの影響で、2020年度に予定していた台湾での現地調査ができず、次年度に使用額を残すことになった。残額については、可能であれば2021年度の台湾調査に充てる予定であるが、調査が不可能な場合には、台湾関係資料などの充実に費用を使う予定である。
|