2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on Mathesis in 17th century
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20K00282
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
武田 裕紀 追手門学院大学, 基盤教育機構, 教授 (50351721)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | imaginabilis / デカルト / フォンセカ / マテーシス / 科学的方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
デカルトにおいて数学(より広い意味でのマテーシス)の確実性が、認識論の側からどのように、あるいはどの程度確保されているのかといった問題を検討していった。その際に、デカルトにおける想像力の役割に注目することで、これまでの知性重視の研究史に対して、一石を投じることができたと思う。本年は、とりわけimaginabilisという語に着目した。 デカルトが自然現象を対象とする学問に取り組む際に、想像力の届きうる射程について考察する。ここではまず、imaginabilisという形容詞にデカルトが託した含意を、歴史的なコンテキストのうちに明らかにした。注目したのは、想像的な質料(materia imaginabilis)という概念であり、とりわけ参照したテキストは、デカルトが学んだラフレーシュでも採用されていたフォンセカ(Pedro da Fonseca)によるアリストテレス注釈Commentariorum in Metaphysicorum Aristotelis Stagiritae(1577)である。フォンセカはmateria intelligibilisと同義でmateria imaginabilisという語を用いており、そこでは数学的な対象のもつ質料的なものが想定されている。デカルトがimaginabilisという用語をポジティヴな意味で使うのは、こうした伝統に拠っている。さらに、こうした想像力によって科学的対象に関する想像可能なものとしてのモデルを構築し、モデルを通して自然現象を吟味・検証して体系化していくことが、デカルトにとっての科学における具体的実践となっていることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の成果は、すでにある程度構想を得られているテーマについての論考であり、また、資料などにも期待通りにアクセスできたので、ほぼ満足のいく結果であった。ただし、海外出張が中止となったため、海外研究者との情報交換がかなわなかった点が、予定外であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度以降は、「解析」analysisという語について、パッポスのラテン語訳から『ポール=ロワイヤルの論理学』までを対象として検証する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により出張ができなかったことと、2020年終了予定であった別課題「近代初期における学知の方法と論証――メルセンヌからアルノーまで――」を1年延長したため。コロナが収束し次第、海外出張を行う予定である。
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[Book] 数学史事典2020
Author(s)
武田裕紀、三浦伸夫、佐藤健一ほか
Total Pages
722頁
Publisher
丸善出版
ISBN
978-4-621-30522-5