2020 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における「夢幻」「幻想」の系譜-泉鏡花文学の成立と受容の検証を基軸として
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20K00284
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
鈴木 啓子 宇都宮大学, 共同教育学部, 教授 (70206473)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 幻想 / 夢幻 / 近代日本 / 泉鏡花 / 幻想小説 / 児童文学 / 翻訳文学 / 古典芸能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「夢幻」「幻想」をキーワードに、近代日本における幻想的な文学現象を、明治初頭から昭和戦前期まで析出し、その特質と展開、および相互の影響関係をについて網羅的に検証し、通史的・統合的な全体像の獲得を第1の目的とするものである。さらに、ここに近代日本の代表的な幻想作家である泉鏡花を布置し、鏡花の幻想的作品の「成立と受容」を、明治期から平成期まで、素材・テーマ・表現機構等の諸点から、通史的・具体的・多角的に検証し、鏡花文学の幻想性の特質と意義、その文学史的位相の解明をめざすことを第2の目的としている。 【1】近代日本幻想文学の生成と展開を把握するための網羅的調査分析と、【2】特定の事例を泉鏡花作品に関連付ける検証・考察を同時並行的に行う計画であり、初年度は、インターネットを利用した文献踏査を遂行した。以下の①~⑦の観点で網羅的な調査を行った。①近代日本(明治初年代~平成期)に刊行された文学作品・評論・解説・研究論文を「幻想」「夢幻」等のキーワードで検索、②硯友社文学、擬古典主義の小説家、文学界グループの幻想的特質、③翻訳文学・外国文学の影響、④近世小説(特に上田秋成・滝沢馬琴)の再評価の動向、⑤歌舞伎浄瑠璃(特に鶴屋南北・河竹黙阿弥)からの影響、⑥能楽の再評価の動向と幻想的作品とのかかわり。⑦近代文学者による児童文学、少年少女雑誌に掲載された幻想的作品の調査。 研究テーマに関わる既刊の実績は、研究エッセイ「エロス的読書、あるいは鏡花文学のエロティシズム」(『澁澤龍彦泉鏡花セレクションⅡ・銀燭集』月報、2020年4月、国書刊行会)、紹介「鏡花幻想譚の創造的再生・『澁澤龍彦泉鏡花セレクション』全四巻(「泉鏡花研究会会報」36号 2020年12月)。三島由紀夫・澁澤龍彦・山尾悠子を中心に、1970年代に始まる鏡花幻想文学の受容と評価を検証するうえで、多くのヒントを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の拠点として、研究代表者が運営幹事を務める泉鏡花研究会(研究大会2回・例会2~3回)を予定していたが、コロナ禍により、2020年度は対面での開催が全面的に見送られた。また、文献踏査の図書館として、国立国会図書館、近代文学館、金澤市泉鏡花記念館、慶應義塾大学情報メディアセンターを予定していたが、コロナ禍による利用制限のため、先送りせざるを得なかった。文献踏査の研究補助員として大学院生の雇用を予定していたが、コロナ禍により、学生の入構制限がおこなわれ、実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
文献踏査は、ネット図書館や購入した図書を用いて継続的に進める。2021年度は2020年度に収集した文献リストに基づき資料の収集をおこない、整理分析に着手する。 泉鏡花研究会との連携に関しては、研究大会のオンライン開催の目処がたった。当面、対面開催は見送らざるをえないが、オンラインによって、全国の研究者との連携が、スムーズに行われるようになったともいえる。 また、現在『論集泉鏡花』第6集(2020年9月刊行予定)と第7集(2021年3月刊行予定)の編集刊行を進めており、この編集チーフを担当している。この編集作業を媒介として、本研究の問題意識を発信し、得られる知見を摂取還元していくことになる。
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Causes of Carryover |
物品費として、図書および高性能スキャナの購入を予定していたが、文献踏査と複写作業を手伝う院生の雇用がコロナ禍による学生の入構制限により困難となったため、次年度に見送った。本研究の拠点として泉鏡花研究会(研究大会2回・例会2~3回)を想定していたが、コロナ禍により、2020年度は対面での開催が全面的に見送られた。また、文献踏査の場所として、国立国会図書館、金澤市泉鏡花記念館、慶應義塾大学情報メディアセンターを予定していたが、コロナ禍による利用制限のため、先送りせざるを得なかった。このための調査研究旅費・資料収集整理のための人件費・文献複写経費が不使用となった。
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Research Products
(3 results)