2023 Fiscal Year Annual Research Report
東北地方諸藩の歌枕(俳枕を含む)の名所化とその表現史との関係を解明する新研究
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20K00286
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Principal Investigator |
錦 仁 新潟大学, 人文社会科学系, 名誉教授
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Project Period (FY) |
2020 – 2023
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Keywords | 歌枕 / 俳枕 / 名所の新規設定 / 藩主の領内巡覧 / 藩撰・私撰地誌 / 旅日記 / 巡見使 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来の歌枕研究の成果を踏まえつつ、地方の視点から新たな歌枕の研究を試みたものである。具体的には、歌枕の場所を一つに特定する研究を批判し、例えば「末の松山」という歌枕が東北地方に五箇所見られるように、後付けで作り出された歌枕を含めて歌枕を捉え直した。 まずは、近世期の東北の各藩における歌枕の名所化の実態を明らかにするために、これを跡づける資料(歌集・連歌集・発句集・連句集・旅行記・歌書・俳書・地誌など)を収集し、翻刻解読を行った。その範囲は、南は白河藩から北は盛岡藩に及ぶ。主な資料は、『白河古事考』『白川古事考撮要並名勝之図』『白河風土記』(白河藩)、『相生集』(二本松藩)、『奥相志』(相馬藩)、『會津旧事雑考』『會津風土記』(会津藩)、仙台藩『仙台領地名所和歌』(仙台藩)、『荘内江戸道中記』(庄内藩)、『名所追考(補正版)』『名処順道記』(盛岡藩)などである。 また、同時に近世期の東北の旅日記を分析した。具体的には、主に菅江真澄の旅日記と古川古松軒の巡見使随行日記である。特に、古川古松軒の絵入り名所案内記『奥羽名勝志』(全五冊)については翻刻を行った。 これらを踏まえて、平安時代から近代にかけての歌枕・名所の歴史的変遷とその意義について、論文としてまとめた(錦仁『歌合を読む―試みの和歌論』所収「歌枕と名所」)。 最終年度の実績としては、研究分担者が、山形県鶴岡の資料『金峰万年草』の中の西行伝承を中心に、山形県の西行に関わる歌枕・名所について論文としてまとめた(山本章博「続西行歌碑を増補する(3)―湯ノ沢岳(鶴岡)―」)。さらに西行学会のシンポジウム「西行の縁―地方からの視線―」において、西行に関わる史跡・名所・歌枕に関する口頭発表を行った(「西行の史跡―その一覧表の作成を目指して―」)。
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