2020 Fiscal Year Research-status Report
上田秋成およびその周辺の俳諧研究のための資料整備と発展的研究
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20K00294
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
近衞 典子 駒澤大学, 文学部, 教授 (20178297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清登 典子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60177954)
大石 房子 (金田房子) 清泉女子大学, 付置研究所, 客員所員 (80746462)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 上田秋成 / 俳諧 / 連句 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々研究メンバーは、平成28~30年度の科研費、基盤研究(C)「上田秋成の俳諧研究のための資料整備と基礎的研究」(課題番号16K02418)が採択され、1年間延長して令和2年3月までの4年間、秋成の発句についての研究を進めてきた。本研究は、上記課題の成果を受け継ぎ、更に視野を広げて秋成俳諧の全貌をより明確にするために、秋成およびその周辺の俳人による連句作品を対象に研究を進めるものである。メンバーは基本的に前課題と同じであるが、新たに研究協力者を1名迎え、4人で研究を進めている。『上田秋成全集』(中央公論社、1990年~)の和歌・俳諧を収載する予定の巻(第13巻)が未刊である現在、秋成連句の全体像を見渡すことができる唯一の基本資料は石川真弘「上田秋成連句集」(『樟蔭国文学』第40号、2003年3月)である。しかし、本論文は秋成連句の翻刻およびその全体像の提示を目的としており、句の解釈については言及がない。そこで本研究は、①全資料の再検証と新資料の探索、②秋成の連句のみならず、連衆を含めた各連句作品全体の内容分析と全注釈、という資料の外的・内的、両側面からの研究推進を目的とする。初年度である令和2年度は、まず最初に研究の土台となるべき全資料の確認から取り組む予定であった。しかし、新型コロナの感染拡大、それに伴う緊急事態宣言の発動という想定外の状況となり、年度当初に多くの図書館・資料館が閉鎖、また人的移動も制限されたため、原典資料の所在確認と検証については予定通りに進めることが不可能となった。そこで方針転換し、今年度は作品分析と注釈を研究の柱として進めることとした。具体的には、オンラインで最初の打合せを行い、今後の研究の方針を確認・共有し、役割分担を決定。その後も定期的にオンライン研究会で各自の研究成果を共有、検討する形式で秋成連句を読み進め、その内容分析と注釈を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を推進するに当たり、まず資料調査(原典資料の所在確認と内容の検証)を行う予定であったが、年度当初から新型コロナの感染拡大、緊急事態宣言の発動という想定外の事態となってしまった。そのため、図書館・資料館の開館を待ってできる範囲で紙焼き資料の収集やコピーの依頼を行ったが、人的移動の制限のため、遠隔地の所蔵資料の閲覧等は予定通りには行えなかった。また、令和2年12月に研究代表者が勤務先の公開講演会で研究に関する講演を行う予定であったが、この大会も中止となった。そこで、これらは後日、可能になった時点で行うこととし、令和2年度は主に研究会を通じて作品分析・注釈を行うこととした。研究会はすべてオンラインで実施した。 第1回目の研究会では、研究代表者が作成した全連句資料データ(先述した石川稿を基本に他の資料のデータを補ったもの)を共有。今後の研究の進め方について、年に数回の研究会を開催して成果発表・討議を行い、その結果を反映したデータを集約するという方針を確認し、最初は秋成独吟歌仙「風限り」を1人9句担当することとした。また研究協力者により、既報告ながらデータから漏れていた資料の提示、および当該資料についての研究発表が行われ、大変有意義であった。 第2回研究会では研究代表者が作成した「「上田秋成連句集」典拠書目一覧」を共有、今後の資料の収集計画の一助とした。また秋成独吟歌仙「風限り」第1句~第24句まで読了。各句の分析と注釈について活発な意見交換がなされ、また原稿のスタイルについても検討し、統一的な形式を定めた。第3回研究会では、前回の続きである独吟歌仙「風限り」第25句~第36句、および新たに「雲淋し」歌仙の第1句~第3句まで発表・討議をした。また、研究会後にもメールを通じて新たな問題提起や資料の共有、新たに気付いた点の指摘など有意義な情報交換が行われ、各自の原稿に反映された。
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Strategy for Future Research Activity |
未だ新型コロナの感染拡大が収まらず、今後の見通しも不透明であるため、各地の図書館等に赴いて作品の現物を確認することが難しいケースが多いと考えられる。これについてはやむを得ないことであるので、状況を見ながら臨機応変に対応することとし、必要資料はコピーや紙焼き資料の郵送を依頼する、本文の確定については、まずはオンラインで確認できる資料を優先する、等の対処を考えている。その上で、まずは連句作品の分析・注釈作業を着実に進めていくことを基本方針とする。 内容分析に関しては、令和2年度に行った秋成独吟歌仙の注釈作業を通じて、秋成の連句の特徴が朧気ながら浮かび上がってきている。また秋成の俳諧を注釈・研究する上で、秋成の人的交流の実態や各俳人の経歴等を理解することが必要不可欠であることも徐々に明らかになってきた。そこで、今後はより幅広く大坂の俳壇の様相などにも目配りしながら、詳細に連句の注釈作業を進めていく予定である。研究会は基本的に2ヶ月に1回程度、オンラインまたは対面で開催することとする。各研究会の席上、あるいは研究会後のメール会議において新たに浮上した問題点については、該当句の担当者が追加調査を行い、メールで情報共有するだけでなく、その追加の研究成果を反映した注釈の修正版を研究代表者に提出する。研究代表者が研究分担者、研究協力者の原稿を集約し、データを蓄積していくこととする。1句1句丹念に読解し討議するという作業を積み重ねていくことになるが、句の注釈には思いのほか時間がかかり、研究期間内に全句を読解・注釈できるか若干の不安もある。しかし、できるだけの努力を続けていくつもりである。 注釈が完結した暁には出版して、より広く世に研究成果を発信することを目指しており、出版社にも既に打診している。今後、より精力的に研究を推進していく心積もりである。
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Causes of Carryover |
令和2年度はまずは現地調査を予定していた。すなわち、作品の所蔵機関を訪問して資料を閲覧、必要な箇所をコピーするなどして基本的な資料の収集を行う予定であった。しかしながら、4月当初から新型コロナの感染拡大と、それへの対応として緊急事態宣言の発令があったため、訪問を予定していた各地の図書館・資料館が閉館となった。また人的な移動の制限もあったため、当研究で予定していた主に関西地方での資料閲覧がほとんど不可能となった。新型コロナの感染状況の改善を受けて訪問するつもりであったが、日程調整の都合もあり、実現できなかった。 令和3年度には、感染の状況に配慮しつつ、可能な限り現地調査を実施すると共に、万が一再び感染が拡大して移動不可となった時に備えて、積極的に紙焼き資料やコピーの取り寄せを行う予定である。 また、令和2年度は研究会はすべてオンラインで実施してきたが、一堂に会して討議する形式の方がより活発な議論が交わされるはずである。できれば夏休み等を利用して対面での研究会も実施したいと考えている。
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Research Products
(2 results)