2020 Fiscal Year Research-status Report
東アジア漢字文化圏における龍宮訪問譚の文化・思想交流史的研究
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20K00299
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
金 孝珍 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (20638986)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧野 淳司 明治大学, 文学部, 専任教授 (10453961)
袴田 光康 日本大学, 文理学部, 教授 (90552729)
堂野前 彰子 (岡本彰子) 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (50588770)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 龍宮 / 水府 / 龍宮訪問譚 / 志怪 / 伝奇 / 東アジア / 漢字文化圏 / 比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
漢代以前には河伯を含む水神の空間を描写した記録や、六朝時代にも鬼神志怪類に水中世界が多様に書かれるが、「龍宮」という語は用いられない。中国の文学作品に「龍宮」という語が見られるのは唐代になってからである。しかし、仏教の枠組みに収まるのではなく、世俗化され元来の道家的・神話伝説的な性格も引き継いでいる。水中世界訪問、龍宮訪問を描く中国の志怪・伝奇類は隣国の朝鮮と日本にも伝わり受容と変容を重ねながら展開した。本課題は、東アジア漢字文化圏に属する日中韓三国の龍宮訪問譚を総体的な類型分析を行い、それぞれの地域における独自的展開と思想的特徴を比較の視点から明らかにすることにその目的がある。 初年度である2020年度は魏晋南北朝・唐代の志怪伝奇小説、主に『幽明録』『異苑』『捜神記』『捜神後記』『酉陽雑俎』『太平広記』の中から個々の龍宮(水府)訪問譚を①龍宮に行く契機 ②龍宮への案内役 ③龍宮への経路・位置 ④龍宮の景観の描写 ⑤龍宮での待遇 ⑥龍女との婚姻 ⑦龍宮からの贈物 ⑧結末(時間の経過)に分類し調査した。龍宮(水府)訪問譚は人間界⇒龍宮(水府)⇒人間界というのが基本構造であるが、このような構造は異界訪問譚と同じである。龍宮訪問譚の特質をより明確にするために仙界訪問譚との比較も念頭に入れて調査を進めた。魏晋南北朝時代の仙界訪問譚の多くは仙界に入るきっかけが偶然であり、また洞窟(穴)を通りぬけて仙界に侵入する。一方、龍宮(水府)訪問譚の多くは手紙を渡すなどの目的、龍王(水神)の招待など何らかの理由により水中世界に入る。また、水府世界に入る方法も「扣樹」「扣藤」「扣橘」のように「たたく」という方法が多く見られる。魏晋南北朝・唐代の志怪伝奇小説の龍宮訪問譚の類型分類は終わっているが、龍宮訪問譚の独自的展開と特徴については道教や仏教といった思想的な観点から現在分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
魏晋南北朝・唐代の志怪伝奇小説に見られる龍宮訪問譚の調査・分析は初年度のうちに完了する予定であったが、魏晋南北朝・唐代の志怪・伝奇小説に見られる龍宮訪問譚の特質を明らかにするために、同時代の仙界訪問譚と比較する必要があり、調査範囲を広げたため、当初の研究計画よりやや遅れた進捗となった。また、研究分担者と協力者との意見交換を月1回に行っていた研究会後に行う予定であったが、新型コロナの影響で研究会が実施できず、意見交換がスムーズに進まなかった。そして8月に中国の志怪伝奇小説の龍宮訪問譚の舞台としてもっとも多く登場する洞庭湖、西湖にフィールド調査を行い、伝承資料などを調べる予定であったが、コロナ禍で実施できなかったことも本課題の研究計画遂行に遅れをもたらした。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は新型コロナ・ウイルスのため研究会および学会、国際学術大会が中止を余儀なくなれたが、今年度からオンラインで開催する方向にある。今年度はオンライン上ではあるが国内外の学会・研究会に参加し発表する機会が得られるので、研究成果を学会発表を通じて行う予定である。また、今年度からはオンライン上で研究分担者と協力者との意見交換を行い、より効率的に課題の分析ができる体制が整っており、昨年度のやや遅れた進捗状況を今年度は軌道に乗せたいと考えている。なお、当初の計画では海外・国内におけるフィールドワークを予定していたが、新型コロナ・ウイルスの状況を踏まえながら慎重に判断していくことにする。海外フィールドワークについては実施の中止も視野に入れており、文献資料の調査・分析に重点を置いて研究課題を遂行していく方針である。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では2020年8月に研究代表者と研究分担者、研究協力者の計4人による中国の洞庭湖・西湖へのフィールドワークを予定していたが、新型コロナ・ウイルスの感染拡大の影響により、 一旦延期したものの状況が好転しなかったため、2020年度の中国へのフィールドワークを取り止めることになった。このため年度内での予算執行が遅れ、次年度使用金額が生じることになった。前年度から繰り越した金額を今年度の海外フィールドワークの費用に当てる計画だが、今後の状況によって海外フィールドワークが実施できないと判断した場合は国内フィールドワークと資料集作成費としてこれを当てることにする。
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Research Products
(7 results)