2023 Fiscal Year Research-status Report
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20K00314
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
尾崎 千佳 山口大学, 人文学部, 准教授 (50335759)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 連歌 / 連歌懐紙 / 宗祇 / 紹巴 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題(1)「「湯山三吟」を軸とした宗祇連歌懐紙の分析」については、前年度までの考察結果をふまえつつ、柿衞文庫蔵伝宗長筆巻子本・早稲田大学図書館蔵伝宗長筆本連歌懐紙・大東急記念文庫蔵筆者未詳連歌懐紙の三本と古注本文を比較した。その結果、大東急記念文庫本と古注本文の親近性が明らかになった。柿衞文庫本・早稲田大学本が連歌座の現場に近い本文を伝えているのに対して、大東急記念文庫本の本文は式目上の修訂を経た決定稿と考えられる。また、早稲田大学図書館本・柿衞文庫本は、ともに、式目点検による修訂後の本文と修訂前の本文を含み、その箇所は一致しない。大東急記念文庫本・早稲田大学図書館本はともに連歌懐紙の体裁をとるものの、その性格は明らかに異なっている。大東急記念文庫本は、従来、原懐紙のかたちを留める古写本として重視されてきたが、文献学的考察の結果、その本文は古態を留めるとは言い得ない。書誌学的方法によって、この結果をさらに検証する必要がある。 研究課題(2)「装飾と本文の関係性に注目した紹巴連歌懐紙の分析」については、前年度までに収集した紹巴書簡全35通から、連歌懐紙にかかる記述を抽出したうえで、紹巴一座の連歌百韻と書簡記事をつきあわせる作業を行ったが、書簡の年次推定が容易でなく、あまり進捗しなかった。また、桃山期に出現する「絵屋」の活動に関する美術史分野の先行研究を参照し、その根拠となる日記の記事を収集した。さらに、紹巴一座の連歌百韻のうち、現存する原懐紙を対象として、所蔵者・年代・下絵の有無等について一覧を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度から2022年度にかけて、新型コロナウイルスの影響により、書誌学的研究の推進に不可欠な原本調査がほとんど実施できなかった。文献学的研究を基軸とする方法に切り替えたものの、基礎的作業に時間を要し、十分な成果をあげる段階には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間の延長を視野に入れた上で、必要な書誌学的調査を速やかに実施し、研究成果の公表につとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の収束に伴って集中的に原本調査を実施する予定であったが、研究方針の変更により、基礎作業に予想外の時間を要し、出張費を十分に執行できなかった。2024年度は、補助事業期間の延長も視野に入れつつ、必要な原本調査を実施したい。
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