2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K00317
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
小井土 守敏 大妻女子大学, 文学部, 教授 (30352660)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 曽我物語 / 武田甲本 / 後期本文 / 流布本 / 謡曲 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、以下の3点について注力した。 (1)武田本甲本および周辺作品の本文の収集…『曽我物語』及び周辺作品の本文調査ならびに収集は、コロナ禍の影響で地方の特殊文庫への訪問が全くできなくなってしまったことから、web上で入手できるものの範囲に絞られてしまった。武田本甲本自体は、紙焼き写真として入手済みであったので、まずは武田甲本の翻刻を進めている。実施計画では、手に入れた対校本とつき合わせながら、本文の策定を進めていく予定であったが、とにかく一通り底本の翻刻を進めることにした。周辺資料として入手ができた、『曽我物語不審問答』については、その翻刻と解説を研究論文として『大妻国文』に発表した。 (2)流布本本文の策定ならびに注釈…流布本『曽我物語』の注釈作業は巻8まで進み、武田甲本の本文変化を検討する際の指標とするに足るものとして、その全体像をつかみつつある。この注釈作業を進めていく中で、『曽我物語』の諸本間における“馬芸”についての関心の濃淡について着目し、その伝本の成立時期と絡めて考察を加えた。その成果は『人間生活文化研究』誌に投稿、2021年度中の掲載が決定している。 (3)芸能との関係…能楽学会第19回大会シンポジウム「曽我兄弟の伝承と能―歴史・物語・芸能―」のパネリストとして登壇する機会を得た。謡曲〈曽我物〉と『曽我物語』の現存諸本との関係、その研究資料としての限界などについて検討を加え、「『曽我物語』の改作の指向―真名本・仮名本―」と題して報告を行った。その報告内容は、学会誌『能と狂言』第19号(2021年10月刊行予定)に同タイトルで入稿済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により、大きく移動の制約を受けたために、地方の特殊文庫を訪問し、原典に触れることができなかったことが残念である。また、本務校におけるリモート授業への対応が、想像をはるかに超える負荷となり、本研究に割ける時間と労力を存分に得ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルス感染症の現状を鑑みるに、遠方はもちろん、近在の文庫への文献調査も、当面は困難であることが予想されるので、文献調査の対象を絞っていくことも必要であると考えている。本文の策定や諸本調査については、公開されているデジタル化された資料等の活用を図っていきたい。
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Research Products
(2 results)